文春文庫
蔭の棲みか

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  • サイズ 文庫判/ページ数 234p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167656492
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

大阪市東部の下町にある、迷路のような集落。そこに隠棲するソバン老の右手首は、戦争で吹き飛ばされた。朝鮮人の元軍人が補償を求めて提訴したという新聞記事が、彼の過去を蘇らせ、集落に事件を呼ぶことに…。第122回芥川賞受賞作に、おおらかなユーモア漂う「おっぱい」と「舞台役者の孤独」を併録。

著者等紹介

玄月[ゲンゲツ]
1965年大阪市生まれ。大阪市立南高等学校卒業後、自営業を営みつつ、大阪文学学校にて同人誌を結成。99年、「おっぱい」が第121回芥川賞候補作となり、2000年、「蔭の棲みか」で第122回芥川賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

172
第122回(平成11年度下半期) 芥川賞受賞。 在日朝鮮人の老人ソバンを 軸に、在日の集落から みた昭和の日本を描く。 ソバンの息子光一が 関わる昭和40年代の 学生運動の在り方は心に 痛い。現在の集落を起点に 過去の在日の集落で起こった 哀しい事実を徐々に浮かび 上がらせていく筆致は強く、 大阪弁が哀しさを増幅させる。 集落の狂気を終盤に向けて 爆発させるプロットも上手く、 鬱積した感覚が肌に伝わって くる…そんな話だった。2014/06/28

kaizen@名古屋de朝活読書会

111
芥川賞】主人公は在日朝鮮人の老人。息子が東大の入試が中止になった年に高校を卒業。東京に出て半年後、中野の路上で撲殺死体。淡々とした日常生活の描写の合間に、暗い、悲しい事件を次々に紹介し、現実とはこういうものだと言いたいのだろうか。2014/06/10

hit4papa

53
タイトル作は、大阪の集落にひっそりと暮らす在日コリアンの老人ソバンと、彼を取り巻く人々を描いています。ヘイトへの苦悩のではなく、強かに生きる人々とその中で渦巻くドロッとした感情が迫る作品です。「おっぱい」は、妻の恩師とその盲目の娘の訪問を受ける夫婦の話し。胡散臭い訪問者にひりっくような夫婦の関係性が重なりざわめきをもたらします。「舞台役者の孤独」は、更生した元不良少年が、いれ上げた娼婦への愛のために翻弄されるお話し。主人公は、幼い頃、弟の死を目の当たりにしてトラウマを抱えているという設定です。どんより。2023/11/13

ヴェネツィア

43
第122回芥川賞受賞作。ジャケットのエゴン・シーレの自画像に魅かれて購入。ここには鬱屈した、しかし強い自己主張や、存在自体への怒りの感情のようなものがある。この小説にも、そうしたものとの共通点が感じられるが、ただし主人公はソバンと呼ばれる70代の在日韓国人の老人である。彼はもう何年も以前から生きる目的を喪失している。しかし、周縁の者たちにとって、彼が生きてそこに存在することに意味はある。それは、曲がりなりにも彼が在日として戦争を経験しているからにほかならない。描かれるエピソードは、どれも暗く重い。2013/02/11

シッダ@涅槃

35
かなーり久しぶりの再読(前回は発売されたばかりのハードカヴァーだった)。エゴン・シーレの手によるものらしいこの表紙も強烈なのだが、おそらく僕はこの作者の作る「設定」や「名付け方」に心惹かれるのだと思う。バラック屋に住む老人「ソバン」とか、下町の寂れたプレハブで商売する「口」とか。そして「設定」の方はほんとにあったことが大半なのだろうなあ、と思うと戦慄を覚える。ただ初読ときは割と暗く重い作品ばかり心に残ったが、いまは明るい「おっぱい」が一番好きかもしれない。2017/02/11

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