出版社内容情報
釧路を牛耳る影山莉菜。父の血をひく青年を後継者に育てようとするも苦難が降りかかる。重い十字架を背負った女が辿り着いた地とは。
内容説明
死に場所を求め、生きる女。裏切りの果てに辿り着いた終焉の地とは。ノワール小説の極北!
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第八二回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年『ラブレス』で第一九回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第一四九回直木賞、20年『家族じまい』で第一五回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
466
前作『ブルース』の続編。物語の舞台は同じ釧路だが、世代交代が起こっていて、主人公は博人の義理の娘の莉菜。前作に比して寂寥感にも乏しく、釧路らしさも薄い。続編を書いたこと自体に無理があったかと思われる。前作が「攻め」であったのに対して「守り」に回っているだけに、そもそもが弱い。莉菜の造型にしても、目的が途中で頓挫しているようで、今ひとつ魅力的な像を結ばないままで終わる。この後の続編はもはやありえないか。ただ、釧路の今と今後の行く末は気にかかるところだ。もっとも、桜木紫乃はこれからも釧路を書き続けるだろうが。2022/10/02
鉄之助
391
北のはずれの釧路で、闇社会と政治のフィクサーとして生きる莉菜が主人公。父の血を引く青年・武博に代議士として赤絨毯を踏ませるため、体を張ったその教育方法が面白かった。が、途中、話が飛んだり省かれたり、物足りなさを感じてしまった。個人的には、札幌の「おにぎりや」の話をもっと読みたかった。実際に”すすきの”には、大繁盛のおにぎり専門店があって、リアル。最終章の終わり方に違和感を感じてしまい、期待が大きかっただけに残念。2024/10/17
starbro
312
桜木 紫乃は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。6年前に読んだブルースの続編、ダークヒロイン影山莉菜が主人公の連作短編集、シャンソンやジャズが流れる釧路の渋い世界、雰囲気は好きでしたが、短編のせいかあまりしっくり来ませんでした。 https://books.bunshun.jp/articles/-/66102021/10/12
さてさて
218
『金か権力か ー 欲に使命感の衣を着せた相手が動くのを、じっと網をかけて待つ。それが莉菜の役目だった』。前作で影の主人公・博人が夢見た未来を継いでいく義娘・莉菜。そんな莉菜が、裏社会で”ダークヒロイン”を演じていくこの作品。そこには政治の裏に蠢く闇を見る物語が描かれていました。前作の世界観そのままに展開するテンポの良い主人公の活躍を見るこの作品。切り口鋭い莉菜の活躍に心躍らされるこの作品。『ブルース』を冠する書名に違わず、「Fly Me to the Moon」など渋く流れる中に展開する見事な物語でした。2023/10/27
いつでも母さん
178
前作は指が一本多い男・影山博人しか覚えていない。その血の繋がらない父・ヒロトをして「男と違って女のワルには、できないことがない」と釧路を裏から支配する影山莉菜の生き様。のっけから桜木紫乃の世界だった。喪ってなおその存在感を示すヒロトに囚われている娘が私には哀しい。ヒロトの血をひく幼子・武博の後継者として、その行く末をざらつく思いで、共に見守った気にさせられる不快な感情もまた、私の好きな桜木作品だった。本作も女を描くのが巧い。その中で弥伊知に惹かれる私もまた哀しいか。番外でRedに対する物語も読んでみたい。2021/10/15