出版社内容情報
欧州の若き知性が、近現代思想の”性悪説”をエビデンスで覆す衝撃作。「様々な分断を統合しうる一冊」(ユヴァル・ノア・ハラリ)。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本詠み人
84
人の本質は善か悪か…歴史や心理学の色々な実験から言われてきた定説を覆す驚きの本。人は良いことより悪いことの方に敏感な性質(ネガティブ・バイアス)があるから、性悪説に傾きがちだけど、そうした癖があることを認識していれば冷静になれる『蝿の王』、スタンフォード監獄実験、ミルグラムの電気ショック実験、傍観者効果として名高いキティ・ジェノヴィーズ事件の知られざる事実が提示されている。衝撃だった。どれも心理学的に有名な実験なのに。90%の確率で人は人を助ける…安堵を胸に下巻へ2022/02/15
ベイス
75
面白くてページめくる手が止まらない。人間は本質的に善である。しかし有史以来、人間の残酷さや意地悪さばかりに焦点があてられてきた。人間は罪深いという宗教観が支配的となり、ニュースが取り上げるのは悲惨な事件ばかり。戦争や闘争の歴史ばかり語られ、性善説は風前の灯。口にすると、こいつは生ぬるい、楽観過ぎると小馬鹿にされる。でも著者は、丹念な現場取材によって、人間=凶暴という説を裏付けてきた様々な実験や定説を覆し、人間とは争うのではなく、助け合う生物であり、そのことが今のホモ・サピエンスの繁栄を築いた、と主張する。2021/10/12
よしたけ
60
ジャレド•タイアモンド、スティーブン•ピンカー、ユヴァル・ノア・ハラリと言った知の巨人たちの考察を一刀両断。殺し合い/対立し合うのは人類本来の姿ではなく、本質は善と結論。悪名高い実験や事件(スタンフォード監獄実験、ミルグラム実験、キティ・ジェノヴィーズ事件など)を分析し、結果や過程が捻じ曲げられていたことを丹念に暴いていく。人類を「ホモ・パピー」と表現し助け合って生きてきた歴史を解説。赤面するという人間特異の性質、爆撃されればされるほど結束力を高める戦時中市民の逸話など、語り口も軽妙で読みやすい。2022/02/05
Homo Rudolfensis
56
☆4.7 めちゃめちゃ面白いです。どうしてこの本が支持を集めるのかわかります。まだ上巻ですが、この本のメッセージは明快で、とても希望に溢れています。人は、生まれつき誰もがナチスなのではなく、善か悪か、選択の余地があればほぼ必ず善を選択する生き物である、ということが数々のデータと、性悪説を「立証する」研究を成敗することで示されており、明るい気持ちになれることでしょう。2022/03/29
れいまん
48
登録が上下逆になってしまいました。 この帯にはもうひとり、人新世の資本論の斎藤幸平氏があらゆる分断を統合しうる書との紹介があった わたくしにとっての性善説はまずは孟子です 孟子は諸子百家の中の古代中国で井田制を唱えており、これは、古代にしては過激な共産主義の芽生えのようなもので、性善説が前提となった説だから、斎藤氏が共鳴するのは大いに頷ける こういう本がたくさん出てくれば世の中捨てたもんじゃ無いって思います。。2021/10/01