内容説明
安藤広重「目黒太鼓橋夕日の岡」、歌川国政「五代目市川團十郎の暫」、歌川国貞「集女八景 粛湘夜雨」、鈴木春信「縁先物語」、葛飾北斎「百物語 さらやしき」、喜多川歌麿「深く忍恋」、東洲斎写楽「二世市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と中山富三郎の梅川」。男と女。出会いと別れ―。喜怒哀楽の表情を濃密に描いた感動作。浮世絵から生まれた七篇の物語。
著者等紹介
諸田玲子[モロタレイコ]
1954年、静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒業。外資系企業勤務ののち、96年『眩惑』でデビュー。2003年『其の一日』で第二十四回吉川英治文学新人賞、07年『奸婦にあらず』で第二十六回新田次郎文学賞、12年『四十八人目の忠臣』で第一回歴史時代作家クラブ賞作品賞、18年『今ひとたびの、和泉式部』で第十回親鸞賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
185
諸田 玲子、3作目です。本書は、浮世絵の名作をもとに描かれる7作の恋愛短編集でした。オススメは、安藤広重「目黒太鼓橋夕日の岡」を題材にした『太鼓橋雪景色』です。 https://books.bunshun.jp/articles/-/5958?ud_book 2021/01/22
いつでも母さん
184
諸田玲子が紡ぐ浮世絵の名作を題材にした短編7話。夫婦だったり弟子だったり、友だったり、想い人だったり…憧れや押し込んだ過去、ままならぬ思い…男と女しかいないのだもの、自分と他者しかないのだものね。人は愛おしい。また、怖ろしくもある。どれも良かったが好みは『暫の闇』『深く忍恋』『梅川忠兵衛』やっぱり諸田さんは好いなぁ。2021/01/07
初美マリン
127
タイトルに拘らず、それぞれ意趣の異なる短編集。人は、ちょっとしたことで、違う道を歩いていくのだろう。浮世絵が美しかった。2021/07/01
タイ子
99
浮世絵の名作(と、言っても私は詳しくはないのだが)から生まれたそれぞれの物語。でも、すごいな。この一枚の絵からこれだけ素敵な物語を紡ぐことができるなんて。安藤広重、北斎、写楽など7枚の絵からなる7つの物語。長年連れ添った夫は自分を見なくなった。そんな時に同じ長屋に越してきた傘張りの浪人者。なんだか惹かれる、手に手を取って道行とか…いろんな空想に胸が熱くなる。物語は意外な方向に向かう「夜雨」が好き。「梅川忠兵衛」はコメディタッチで面白い。男と女の喜怒哀楽が滲み出るような極上の物語。この作品まだ読みたいな。2021/03/30
じいじ
93
粋な装丁に魅了されて急遽読んでみた。歌麿・北斎・広重など7名の浮世絵を題材にした読物。ドロドロした濃いめの内容を期待して読みはじめたが、意に反して軽めの仕上がりだったが、それなりに愉しめた。個人的好みは【夜雨】と【深く忍恋】。裏長屋に灯る不倫の淡い恋心。亭主にバレて淫らな女と思われないように気を配る女心が愛しい。そして駆落ちを妄想するのが何とも可笑しかった【夜雨】。女将がくわえた長煙管がひときわ艶っぽい。『もしも生まれ変わるなら、一度はなりたや長煙管』齢80の爺ィでも、その心境に陥りました【深く忍恋】。2021/06/27