内容説明
彫刻の縮小模型、蔵に眠っていた屏風、デッドストックのアロハ…こいつは金になる―。だましだまされ、最後に笑うのは誰?著者の十八番、傑作美術ミステリー!価値を知らない素人に、親切を装って作品を売りさばく段取りをつけるが―「マケット」。阿漕なホストに画廊勤務の経験があると知り、美術品を使って罠を仕掛ける―「上代裂」。技術の粋を集めてヴィンテージ・アロハの精巧な偽物を作るが―「ヒタチヤ ロイヤル」。資産家に偽物を掴ませた悪徳業者を懲らしめようと、ある策略をめぐらす―「乾隆御墨」。素人の蔵から重文級の屏風絵が出た。安く買いたたこうと芝居を打つが―「栖芳写し」。財荒難に陥った美術館が極秘に青銅器のコレクションを売るという―「鴬文六花形盒子」。
著者等紹介
黒川博行[クロカワヒロユキ]
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学卒業。高校の美術教師を経て、83年『二度のお別れ』が第一回サントリーミステリー大賞佳作、86年『キャッツアイころがった』が第四回の同賞大賞を受賞し、作家活動に入る。96年「カウント・プラン」で第四九回日本推理作家協会賞、2014年『破門』で第一五一回直木賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
250
黒川 博行は、新作中心に読んでいる作家です。表紙絵から後妻業的な詐欺師の物語かと思いきや、古美術・骨董品騙ミステリ連作短編集でした。オススメは『マケット』です。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639130562020/12/28
utinopoti27
145
魑魅魍魎が跋扈する、書画骨董ビジネスの裏を書かせたらダントツに面白い黒川氏。本作に収録されている6つの短編も、ケレン味タップリの筆致で楽しませてくれる。テンポの良い関西弁のセリフ回しと、短編らしい起承転結のはっきりしたシナリオが効果的。なかでも、地面師を彷彿とさせる騙しの手口が登場する『鶯文六花形盒子』がいい。欲の皮が突っ張った人間の心理を上手く突く詐欺師のテクニックと、胸のすく着地に注目だ。騙す奴が悪いのか、騙される奴が馬鹿なのか、異次元感覚の黒川ワールドにどっぷりハマるのも悪くない。2021/02/12
あすなろ
132
黒川氏の美術系小説。黒川氏のこのジャンルも捨てがたいジャンルなのである。そして、黒川氏だから決してお上品な美術物である訳がない。騙るという先ずは題名がイイ。あくまで騙すのではなく、贋作でもないのである。あ、コレはワシが書いた奴や、そんな言葉がゴロゴロ出てくる。そんなセリフに惹き込まれ、一気に読み通してしまった連作短編集。続きが出るのかな、今後。こうした内容に興味覚える方には愉しいエンターテイメントかと。2021/05/30
修一朗
114
「なんでも鑑定団」は好きだったし,疫病神シリーズの中では「螻蛄」が特に好き。そんなわけでこの古美術シリーズ3作目も滅法面白かった。コレクター&美術商&美術館というせまい世界で繰り広げられる小悪党たちの悪知恵の数々!扱う文物の価値の付けられ方が実にさまざまでホントに面白い。写しだって縮小モデルだって評価できればちゃあんと価値がつくのだね。どれもよかった。「鶯文六花型盒子」は最新技術をすっごくニッチな文物に適用した手口で特にお気に入り。早速,シリーズの残り2作「文福茶釜」「離れ折り紙」も読みます。2021/01/29
33 kouch
100
表紙的に遊郭での男女の駆引きみたいな騙し合いかと思ったが、、内容は古美術を巡る騙し合い。騙されたものが、今度は仕掛けたり痛快感もある。出てくる乾隆御墨、枝銭、上代裂、ヒタチヤ ロイヤル、栖芳写し、鶯文六花形盒子、いずれも初めて聞くものばかり。ネットで検索しながら物語を楽しんだ。騙した人と、騙された人のその後の顛末まで語らない話も多く、想像力が掻き立てられるのもいい。これを機に古美術やヴィンテージにも興味を持ちたい。勿論、この業界の怪しさ、不確かさは十分理解したので自身で購入することはありませんが。2024/06/30