出版社内容情報
東日本大震災を挟み二部に分かれた傑作歌集。絶望かと思える風景と、新たな南の土地で芽生えた新たな光の兆しを見つめる歌人の目。
俵万智の第五歌集。東日本大震災を間に挟み、第一部、第二部と分かれる。俵は、放射能被害を逃れ、西へ西へと移動し、幼い息子の手を引き、運命的に石垣島への定住を決める。そこで出会った自然や人々。冒険心を掻き立てられる幼子。さまざまな経験や観察の中から生まれた341首。母として、3・11以降を生きる日本人の一人として、世界を受け止める。新たな生命力の獲得をベースに詠まれた傑作歌集。
内容説明
三百四十一首の最新歌集。
目次
ゆでたまご
島に来て
オレがマリオ
モズクの森
海上の鳥
見せたい虹
弓張り月
風と遊ぶ
パパイヤの種
蝉のいた夏
東京タワー
さざやかな風
夢の木の実
百合の食卓
愛よりも
叔父叔父
監視カメラ
星のクイズ
著者等紹介
俵万智[タワラマチ]
1962年大阪府生れ。87年刊行の歌集『サラダ記念日』で翌年、第三二回現代歌人協会賞を受賞。以降、幅広い執筆活動を行い、96年より読売歌壇の選者を務める。歌集に『かぜのてのひら』、『チョコレート革命』、『プーさんの鼻』(若山牧水賞)。2004年、『愛する源氏物語』で第一四回紫式部文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
386
俵万智さんの第5歌集。2部構成をとり、第1部は震災のまさにその日から沖縄移住後、本書の出版(2013年11月)まで、第2部は第4歌集『プーさんの鼻』以降のものをまとめている。「新鮮なうちに切れ味よく詠んだ」子どもの歌「子どもらはマングローブの森に消え「あった」とかすかな声が聞こえる」。そして「じっくり寝かせ」た恋の歌「性欲のこと聞かれれば女にもあると答えて時計をはずす」。あるいは子を愛する母の歌「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」からなる。いずれも円熟の境を迎えつつあるか。強!推薦。2017/02/23
masa@レビューお休み中
138
311が起きた後、仙台のご両親と息子さんに再会できたのは、4日経ってからだった。その後、仙台の住まいを離れ、西へ西へと向かった万智さん。今は、息子さんとともに沖縄の石垣島に住んでいるといいます。その震災から移住後の生活を綴った歌集です。詠まれているのは、大部分が移住後の短歌なのですが、なぜか震災の歌が根強く胸に残っているのです。それは、決して震災と移住は対極にあるものではないからなんでしょうね。すべてがつながっていて、その延長上に今の生活がある。だからこそ、我がことのように良かったと安堵するのでしょうね。2014/04/03
新地学@児童書病発動中
135
天性の歌人だ。俵万智に手にかかったら、どんなことでも歌になる。この歌集では震災を逃れて、沖縄で息子と暮らす心境を詠んだものが多い。寄る辺ない気持ちが沖縄の自然で癒されていく過程が手に取るように分かり、私の心も明るくなった。やはり子供さんのことを詠んだ歌が良いと思う。母としての愛情がまっすぐに伝わってくる。「おかあさんきょうはぼーるがつめたいね」小さいお前の手が触る秋2016/03/23
yanae
126
お気に入りさんのレビューを見て手に取った本。俵万智さんの第5歌集。仙台に暮らしていた震災時、沖縄に移住した震災後。前回の歌集から震災までの時期。それぞれを歌った歌集です。すごいよかった。ビックリした。震災時の歌集は当時を思い出して泣きそうになったし、一人の男の子の母である万智さんの子供の歌には共感したし、恋の歌は素敵だった。万智さんにはまりそう。遡って歌集よみたい。あとがきもとても素敵で息子さんのコロコロコミックのくだりにはじーんとした。素敵な素敵な一冊でした。2017/08/09
パフちゃん@かのん変更
106
「サラダ記念日」で一躍有名になったのは27年前。2003年には未婚のまま男児を出産しています。その父親ってサラダ記念日の人ではないのかしら。結婚できない辛さ、それでも愛を詠う歌人としての強さを思います。その男の子がまたセンスがいいのよね。昔、「恋をするがいい、失恋すれば詩が書ける。しなかったらもうけものだ。」と言ったのは誰だったか。俵さんも恋をしたから歌が書けるのかな。未婚のまま出産してすごく強くなられたと思います。2014/08/24