出版社内容情報
明治の初め、幕臣の娘が薩摩の男と結婚。男は初代文部大臣森有礼。その令夫人、広瀬常の波乱に満ちた人生を描く一代歴史絵巻小説。
内容説明
西太后とビクトリア女王に初めて拝謁した、美貌の外交官夫人。幕臣の娘が薩摩の男に嫁ぎ、欧州外交界で活躍、明治初期を駆け抜けた一人の自立した女性の疾風怒涛の半生。
感想・レビュー
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真理そら
46
『明治乙女物語(滝沢志郎)』を読んで森有礼の最初の妻・常に興味を持ったので読んでみた。離婚の原因を常が在英中に不倫し、その子供ができたことだというスタンスで書かれている。森有礼の描き方も厳しい。日本が不平等条約を改正するために外交官として森夫妻は奮闘したが、改正できたのは交渉だけではうまくいかず結局軍事が必要だったという結論になっている。これはいつの時代も同じではないだろうかと感じた。力を持たない正義は無力だ。2019/08/12
Tadashi_N
30
華麗なる外交官夫人の舞台裏。背伸びしすぎて、辛そう。節目に登場する辛夷が印象的。2019/03/27
ポメ子
10
津田梅子親子の事が描かれた『梅と水仙』を読んで初代文部大臣の森有礼の初めの妻、森常の事が出てきて、彼女が主人公の、同じ作者のこの本を読んだ。前作と重なる内容があり、当時の事を深く知る事ができた。 34歳までの記述だが、旧幕臣の娘であった常が、薩摩出身の森と結婚をし、薩摩の家をひきづる親族との葛藤、西太后やビクトリア女王と拝謁、イギリスでの生活、さまざまなものを経験してきたんだなあと驚いた。2021/02/28
ソババッケ
6
明治時代、一橋大学の創設者であり、初代文部大臣であった森有礼の妻となった広瀬常の半生を描いている。幕末、旗本の娘に生まれた常は、明治維新に父母とともに駿河に移住するが、その才能と容姿から、開拓使女学校へ進む。縁あって旧薩摩藩士の森家に嫁ぎ、外交官となった夫を支え、北京、ロンドンなどの生活を送る。二人の子をなし、帰国した夫婦は鹿鳴館時代を迎えるが、意外な結末が待っていた。不平等条約の是正の使命のもと、当時の時代と新政府の動きを綴っていく。外交努力を重ねていくが、最後は軍事力という皮肉な結果も。★3.82013/02/27
紙虫
6
明治という新しい時代となり、女性はどう生きていくのか。価値観が激変してしまった男性達と同様、女性の世界も大きく変わっていくと思われた。元幕臣の娘、常。美貌とその頭脳を生かしその変革の旗手となり、外交官の妻として日本の不平等条約の尽力する。欧米思考の夫森有礼とともに西大后やビクトリア女王とも面会し、輝かしい実績として認められるかと思いきや、新しい時代はまだ、彼女を認めてはくれなかった。波乱万丈の彼女の半生をドラマチックに描いて一気に読ませます。若干、NHKのドラマみたいですが…。2010/10/30