内容説明
日露戦争直後、前人未踏といわれ、また、決して登ってはいけない山と恐れられた北アルプス・劔岳。測量官・柴崎芳太郎は、山頂への三角点埋設の至上命令を受け、地元の案内人・長次郎とともに、器材の運搬、悪天候、地元の反感など、さまざまな困難と闘いながら、その頂に挑戦する。そして、設立間もない日本山岳会隊の影が―。我が国最高の撮影監督といわれる木村大作が自らメガホンをとった、畢生の映画化作品の原作にして、新田次郎山岳小説の白眉を、読みやすくした新版。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
1912年長野県生まれ。無線電信講習所(現在電気通信大学)卒業。56年「強力伝」にて第34回直木賞受賞。66年永年勤続した気象庁を退職。74年「武田信玄」などの作品により第8回吉川英治文学賞受賞。80年2月没
山本甲士[ヤマモトコウシ]
1963年生まれ。96年『ノーペイン、ノーゲイン』で第16回横溝正史賞優秀作を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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28
素晴らしい本で楽しめました。特に登場人物たちに感動しましたし、扱っている話も良いし描写も迫力がありました。新田次郎原作も読まず映画も見ないで、本作を読みました。私は、山本甲士ファンで、特に「三丁目の夕日」のノベライズ版が好きですし、「あたり」「ぱちもん」などのオリジナル小説も好きです。なぜ、この作者がもっともっと読まれないのかがいつも不思議でしょうがありません。本作も期待どおりの素晴らしい作品でした。インターネットで写真や地図などを調べながら、読み続けました。登山はしませんが山を見るのが好きです。2015/11/02
も
23
空白地帯に正確な地図をもたらすため、測量官の柴崎芳太郎一行が未踏の山、劔岳の山頂を目指します。弘法大師が草鞋三千足を使っても登れなかったという伝説が残る劔岳を知恵と知識と技術、体力を絞って登って行く様は、目の前に鋭い針の山が聳えているような感覚でした。どうなることか先が気になって気になって。読了後の達成感がすごいです。2015/01/26
gtn
22
明治末、山岳会に先んじ、剣岳登頂に成功した柴崎測量官とその人夫たち。それを称える山岳会、直属の上司。彼らを畏敬する地元の老人たち。一方、遥か昔に何者かが登頂した痕跡があることを知り、興味を失う上官。そして、測量官に敵意をむき出しにする富山県庁土木課。特に県の対応に違和感を持つ。測量官は陸軍に属し、国家公務員。国も地方も同等とはいえ、今でも、地方は国に応対上は敬意を払う。ましてや明治の頃はそれが顕著と想像。だが、再考すると、現在も国に対し何たるものぞと威張る地方公務員がいる。いつの時代も強がりはいる。2024/12/23
うずら
13
2年前に新田次郎さんの原作を読んで、今回新版を読了。原作の雰囲気を損なうことなく、とても読みやすく書かれていて楽しめました。山岳会の小島さんからの電報を読むシーン、胸が熱くなりました。葉津よさんの新妻ぶりもかわいい。明治の人たちのひたむきな生き方を描いた小説、大好きです。2013/05/29
ネオ
11
まだ早月尾根や別山から剱岳に登れなかった時代。柴崎さんや長次郎さんなど魅力的な登場人物に一気読みしてしまった2024/12/10