内容説明
「一度だけ…お嫁さんにしてください」涙声ですがるおすずを信太郎はやさしく諭して帰したのだが…。著者会心の時代小説連作短篇集。
著者等紹介
杉本章子[スギモトアキコ]
昭和28(1953)年、福岡県に生れる。ノートルダム清心女子大国文科卒。54年、「男の軌跡」で第四回歴史文学賞佳作に入選。平成元年、「東京新大橋雨中図」で第一〇〇回直木賞を受賞
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感想・レビュー
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れみ
78
許嫁を裏切って別の女性といい仲になってしまい勘当されて芝居小屋で働いている信太郎が、自分や周囲の人々に起こる事件の調べに乗り出す…というお話。シリーズ1作目、タイトル通り、信太郎の元許嫁・おすずの影が色濃い感じがした。最近、落語とか落語を扱った漫画に触れる機会が多かったので、江戸言葉が心地よくて物語の世界に浸ることができたなか、現代が舞台のサスペンス物にも通じるような、事件の裏に渦巻く人間模様もあって、なかなか楽しめた。このシリーズ、順番に読んでいこう。2019/01/10
優希
40
悲しみと優しさの交錯した物語だと思います。切なさと癒しの時間を味わいました。2022/06/08
星群
22
主人公・信太郎は呉服太物店の息子だが、女性関係のことで勘当され、河原崎座で働いている。5編からなる連作短編。共通しているのは、事件解決後の颯爽感と、事件に巻き込まれた人を想ってのしんみり感。中でも、盗賊に襲われて自害した、信太郎の元許嫁・おすずの、信太郎を想う健気で一途な気持ちをみると、やるせない、いたたまれない気持ちになる。勘当のもととなった、おぬいとのこれからが気になるところ。2013/12/04
baba
19
太物問屋の息子信太郎は父に代り寄り合いに出席してある女性と出合い、家族も店も許婚も捨てる。話しは許婚が賊に襲われ自害して、敵を討とうとする所から始まるので、どんなやり取りで全てを捨てたのか知る由もないが、小さな疑問や引っ掛かりをもとに、幼馴染の下引きに伝えて解決を待つ手際が良い。仕事仲間や長屋の人々とのやり取りも面白く次が楽しみ。2015/05/15
としえ
16
芝居小屋で働く信太郎は、許嫁がありながら引手茶屋の女将とわりない仲になったことから破談となり、実家の呉服屋からも勘当された過去を持つ。その信太郎の元に、かつての許嫁・おすずが訪ねてきた表題作『おすず』を始めとする短編五話。こうした人情物、嫌いじゃないけどなんだかなあ…。事件絡みのことはともかく、おぬいや実家のことはどうするつもりなんだろう?と、信太郎の考えがよくわからないあたりがモヤモヤする。シリーズがすすめば、ちゃんと解決してくれるのだろうか。2017/01/26