出版社内容情報
ソバン翁の右手首は、戦争で吹き飛ばされた。朝鮮人の元軍人が補償を求めて提訴したことを知り、過去が蘇る。芥川賞受賞作を収録
内容説明
迷路のような在日の集落に棲むソバン老。ある新聞記事が彼の過去を蘇らせ、集落に事件を呼んだ。芥川賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
路地
55
韓流ブームのなかで今はもうなくなってしまったかもしれない、大阪下町の在日コリアンの人々の暮らしの原風景。梁石日さんの作品で血と汗が臭うような熱っぽい世界観に魅了された記憶が蘇ってくる思いがした。同じ町並みを舞台にしつつ、玄月さんの作品にはどこか醒めた哀しみを持つ主人公が印象的。 併録作に出てくる、そばに公園のある韓国教会とはもしかしてあそこかな、と地図を思い浮かべながら読むのも楽しかった。2022/10/30
R
32
結構古い芥川賞受賞作品。怒りとは異なる憤り、憤懣を描いた作品と読めて、背景としての差別とそういう空気そのものへの違和感をあぶりだす内容で普遍的なテーマなんだが、読んでみると情景が当時の当たり前なんだろうけど、今と違いすぎて驚いてしまった。戦後から連綿と続く特殊な集落が存在した、ある意味特異的な状況におけるそれなので、今読むと感想がそんな時代があったんだなという方に引っ張られてしまった。いや、今もあるのかもしれないが、当時よりもより潜っているのではないかと感じたりする。2024/06/01
Ducklett21
9
在日朝鮮人である作家による、在日集落という暗く重い社会の物語。在日集落という国内の異国については、祖父母などから少しは聞いていたが実際の話を読むのは初めてでとても興味深かった。時代と環境が違いすぎてなかなか感情移入はしにくいけれども、ムラ社会の特殊なルールや蠢く感情などがとてもリアルだった。在日という中に留まるも、外に飛び出してもきつい世界で生きなくてはいけない人々のリアルを、もっと読んでみたい気がする。2023/09/06
大阪のきんちゃん2
9
表題作は第122回芥川賞受賞。他2篇を収録。 何だろう?独りよがりな感じがします。万人に読んでもらおうという感じがしません。文学としてはそれでいいのかも知れませんが・・・ 2作目(前回芥川賞ノミネート)の方が取っつきやすいと思います。男女のあり方は屈折してますケド・・・ 3作目はこれまた思弁の塊。若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」町田康「告白」と同じテイスト、妄想と現実(あくまで小説の中の話ですが)が分別できませんでした。 何れにしても、大阪のある一面が垣間見えて面白いとは思いましたが。2020/06/10
fubuki
8
私には良さがわからない。セックスと暴力ばかりが目立って、気分が悪くなる。もちろん綺麗ごとだけでは人生は語れないけれど。2015/10/23