出版社内容情報
思い出の家がどこにも見当たらない……。故郷を訪ねた主人公の隠された過去が次第に明らかにされていく。表題作ほか恐怖短篇七篇
内容説明
古い住宅地図に閉じ込められた思い出の町、あの少女の家は空き地とだけ記されていた…。凍りついた時のゆるやかな復讐が始まる―。表題作ほか7篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ツキノ
11
第106回(1991年下半期)直木賞受賞作(読んでから知った)。7つ短篇集で、どれも「記憶」にまつわる話。最近読んだ『非写真』と似たような感触でぞっとする。「ねじれた記憶」「遠い記憶」「冥(くら)い記憶」が印象に残った。似て非なる作品。岩手の地名は実際にある場所らしい。エッチャンおすすめ。読めてよかった。2015/09/26
みゃお
5
久しぶり作家さん。 時間軸の歪みの物語は 懐かしさすら感じた。 1冊まるごとおどろおどろしい雰囲気で よかった。2022/04/08
KJ
4
在る筈の家が無い。記憶と現実の乖離が生む湿った恐怖。永く刻み込まれる記憶には相応の理由がある。曖昧な部分に潜む恐怖。捻れた記憶は時間の概念を超えて繋がる。辛く言えない記憶は蓋をしている限り罪悪感から解放されない。直視した時に悲劇は確かな形で像を結ぶ。食中毒の原因究明から浮上する悍ましい真実。楽しげな雰囲気が恐怖に変貌する描写が秀逸だ。恐怖の背後に人間の悲哀や愛情を感じるから強く魅了される。記憶に時効が無ければ辛く消したい過去に永遠に苛まれ続ける。記憶とは想像以上に曖昧で脆弱な代物だ。故に物語の萌芽がある。2024/11/30
さんつきくん
4
岩手を舞台にし、「記憶」に焦点を当てた、ちょっとした短編ミステリー作品集。ハズレなしでそれぞれ面白かった。さすが直木賞受賞作だ。時間軸がねじれていた「ねじれた記憶」と、体に不調がきたし、原因が岩手産の水にあると分かり、真相を確かめに岩手へ向かう「膚の記憶」が特に面白かった。それぞれ最後に真相が分かると感心してしまう作品達。短編だが、上手く落ちまで収まっている。そこがすばらしい。2019/08/19
ふかきふき
3
☆☆ ちょっとホラー混じりの短編集。そこここに出てくるわんこそば。2024/05/25