出版社内容情報
学生時代、パン屋を襲ったあの夜以来、夫にかけられた呪いをとくため、妻が企てた大胆な計略の顛末は?微妙な疎外感を抱えた人と人の親和と再生をえがく作品集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
155
五年ぶりの再読です。図書館からハードカバーを借りて読んだので、これはこれで時代というか趣きを感じます。表題作とのちの大作『ねじまき鳥クロニクル』の原点にもなる作品以外は何度読んでもあまり覚えられず。かといってつまらないワケではありません。前回読んだトキと同様にやっぱり『ファミリー〜』の兄と妹の会話は独特でニヤリとしますし、『象〜』は春樹さんならではの不思議感を直球で描いています。「双子」が出てくる話はハルキストとしてはたまらない演出かなと。至るところに「ワタナベノボル」が出てくるのが、春樹さんらしいです。2020/05/20
かるかん
68
『どんな鮮明な夢も、結局は不鮮明な現実の中に呑み込まれ、消滅していくものなのだ。そしていつか、そんな夢が存在していたことすら、僕には思い出せなくなってしまうだろう。』 再襲撃後には何かまた同じようなショックを受けたのだろうか。人生において何かを変える出会いというのはそれほど多いわけではない。こういった変化が起きるショックを体験できるのなら、パン屋を襲撃してみようかしらん。2015/12/14
おかむー
56
セカイのハルキムラカミの短編集。デビュー5~6年後の‘85年あたりの作品なので初期とはいえるか。『可もなし不可もなし』。“合わない派”の俺(アンチとは言わない)としては、やっぱり収録された6つの短編どれをとってもまわりくどさと「だから何?」で終わるいつもの“いけ好かない”文章に主人公を後ろから蹴飛ばしたい(笑)。…というか、初期だけに「やれやれな僕」と「スパゲッティをゆでる」と「あけすけなセックス」という世間的に知られるハルキムラカミ“三種の神器”が実にわかりやすく揃ってるところは笑っちゃうレベルですね。2020/08/12
佐久間なす
51
どれも日常の中の非日常が描かれたちょっと不思議な物語で面白かったです。 世界を変えるためには自分が変わらなければいけない、自分が変わっても世界が変わらないのなら、世界に馴染めるよう努力するしかないということを、この本を読んで思いました。 それにしても気になるのは、ワタナベ・ノボルの本当の正体です。同一人物のようで全員同一人物じゃない、そんな不思議なところがとても面白いし気になって気になって仕方ないです。2013/03/14
再び読書
38
佐々木マキ氏の印象的なカバーとは特に関係の無い物語。村上氏のタイトルの付け方は個性的で意味が一般人にはわかりにくい。読んでもとのタイトルと内容が結びつかない。ある意味、タイトルで手に取る読者も多いと思うが、彼はそこに全く、ある意味読者目線が無い。伏線の回収にも繋がるが、そこに引っ掛かりを感じる読者はお手上げだ。やっと本に戻るが、表題が印象的でパン屋をマクドナルドに置き換える妻の思考も見事?というしか無い。最後の「ねじまき鳥クロニクル」の元の短編も、これを三部作へひろげたのも驚き