内容説明
重畳する飛騨山脈を縫いつつ富山湾に注ぐ庄川は、木材運送の大動脈として、日本の林業を支えていた。その大動脈を分断するダム計画が昭和の初めに持ち上がる。ダムができてしまえば林業およびその周辺の産業の死滅は必至。しかし、太平洋戦争につきすすむ日本の電力事情を背景に、電力側は金にあかせて周辺住民から土地を買上げ、ダム工事を強行する。木材側は行政訴訟、民事訴訟などありとあらゆる手を使い、電力側と闘う。その激しい闘争の最中に征一郎と由紀江は出会った。半世紀に及ぶ二人の愛の行方は?庄川を頼りとして生きた杣夫たちの運命は?自然と進歩の調和を問う一大叙事詩。
著者等紹介
山田和[ヤマダカズ]
1946年、富山県礪波市に生まれる。主な著書に『インドミニアチュール幻想』(1996年平凡社。講談社ノンフィクション賞を受賞)など
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感想・レビュー
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kichy
2
ダムの建造により木材を生業とする流域の者たちが抵抗を示した熱いドラマが詳細に描かれる。庄川流木事件と一言では片づけられないほど電力会社と木材に携わる者たちとの闘いは壮絶だったのだろう。主人公の純愛ドラマも美しく本書の良きスパイスとなっている。過去にこのような出来事があったとは全く知らなかった。地元のことをもっと勉強してみたい。2024/05/05
はね
1
大変なボリュームだったが面白くてどんどん読み進めました。昭和初期の林業、ダムができる前の庄川の様子が目に見えるようでした。主人公の恋愛が結婚に至らなかったのが、良くわからなかったけど、交わしたラブレターはすごく熱くて読んでいて赤面するほどでした。物語の終わり方もとても良くて、本を閉じたあと涙してしまいました。2014/11/29