内容説明
偉大な先達から「一番の変人」と評された科学者の本格的評伝。無口に関する単位が彼にちなんでつくられたほどの寡黙で非社交的な科学者が示した人間的側面とは?読み応えと知的好奇心の充足を保証するサイエンス・ノンフィクション。2009年度コスタ賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
26
ディラックは発達障害だったのかもしれない、と結論している2023/10/03
シタン
16
ディラックの生涯全体が書かれた一冊。性格やプライベートにページを割いているけれど、そんなことよりも僕が気になるのはその思想・研究スタイルと同時代の学者とのつながりでした。無神論者だったことやミルの影響、工学出身ゆえの技術者的センス、実験への一致よりも数学的美の追究、視覚的思考、ハミルトニアンの愛用、等々。同時代の学者はやはりすごい。アインシュタイン、シュレディンガー、ファインマン、カピッツァ、ダイソン…。もう少しでブレッチリー・パークに行ってチューリングと出会ってたかと思うとそれを見てみたかった気もする。2018/05/07
onaka
9
変わり者で寡黙な理論物理学者ディラックの伝記。物理を学ぶ学生だった頃、ディラックの『量子力学』と『一般相対性理論』を読んで、本質的なことが数学的にスッキリ記述されていて、これすごい!と思った記憶が蘇る。本書で、ディラックの残した物理学上の貢献を改めて眺め、その幅広さと先見性に圧倒されるが、それよりも何よりも、父との確執、兄の自殺、意外な結婚、ソ連の友人を救うための奔走などなど、私生活面が生き生き描かれていて、とても興味深い。かなりの大著だが、翻訳が良くストレスなく楽しめる。あっぱれ!2014/06/06
OZAC
7
かなりのボリュームだったが、ディラックの幼少期から最晩年まで非常に丁寧に描かれていて、読み応えは抜群だった。 これ一冊でディラックのすべてがわかるといえるかもしれない。残念だったのは、早川書房の本にしては珍しく誤字が多かったことと、訳文がやや直訳気味で読みづらかった点だろうか。2019/11/02
tom
5
読了まで2週間。理論物理学者ディラックの伝記。この本を読んでも量子論がなんなのかさっぱり理解できなかった。でも、ディラックの人となりは興味深いし、周りに現れるのもすごい人たちばかり。分厚いけれど、以外にスムーズに読むことができる本です。30章で自閉症、アスペルガーのことを取り上げている。ディラックの振る舞いは、確かにそうだろうと思う。その上で、この人たちにあるという情報を体系的に整理する能力、視覚的想像力、集中力、決意の強さといったものが、とてつもない仕事につながったと知ることができたこともよかった。2011/05/25