内容説明
死んだほうがいい。死にたくない。生き残る―。“天国への階段”をシンボルとするマルドゥック市。ある夜、少女娼婦ルーン=バロットは、賭博師シェルの奸計により爆炎にのまれる。瀕死状態の彼女を救ったのは、委任事件担当者にしてネズミ型万能兵器のウフコックと、ドクター・イースターだった。一命をとりとめたバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵の事件担当官ボイルドが立ちはだかる。それはかつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした因縁の相手だった。壮絶な銃撃戦の果てバロットとウフコックは、シェルが運営するカジノで自らの有用性をかけた勝負に挑む。過去の自分と向き合い、生きる意味を考え始めたとき、バロットの最後の闘いが幕を切った―。少女の喪失と再生を描いた著者の最高傑作に、大幅な改訂を加えた新版、堂々刊行。
著者等紹介
冲方丁[ウブカタトウ]
1977年岐阜県生まれ。早稲田大学在学中の1996年に『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年、第24回日本SF大賞を受賞した『マルドゥック・スクランブル』などの作品を経て、2009年、天文暦学者・渋川春海の生涯を描いた初の時代小説『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し、第143回直木賞の候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
117
読み終えて圧倒される充足感と虚脱感。やはり中盤のギャンブルシーンがこれでもかと続き凄い。カジノでバロットが成長し覚醒していく様が素晴らしい。高速で跳ぶ弾丸のような小説。2010/10/03
優希
97
成長と再生の物語だと思いました。爆炎による瀕死状態から救われた少女娼婦。自分が被害者となりかねなかった事件に挑むことで殻を破っていくように見えました。愛されたいが故に奪われたものも多い少女は、素晴らしい仲間と最悪の敵に立ち向かう。絶望を改めて知ることにはなりますが、愛したいと思う相手を見つけるのに繋がっていくのが、生きることは何かを掴みに行くことだと教えてくれるのだと思いました。それは運命を掴むということ。傷ついたことのない人はいない。傷つく中で生きるのだと改めて気づかされる作品です。2016/08/24
そのぼん
64
摩訶不思議な世界観でした。深く考えるというより、全体的な雰囲気を味わう感じでした。少女のトラウマやパラレルワールドのような世界、カジノなど多岐にわたって描かれていて、とても一言では言い表せません。2012/10/28
藤月はな(灯れ松明の火)
40
辛い境遇故に感覚や感情を自分と切り離すことができ、「死んだ方がましだ」と思っていた少女娼婦のバロット(雛料理)。最初の彼女の性格にイラつきながらも自分でスキャンした物に変貌できるジェントルマンな黄金鼠のウフコック(半熟卵)や研究には熱心だけど色々、女の子の扱いに戸惑っているドクター・イースター達に癒されました。そしてウフコックに執着する、訪れない眠りと虚無に憑かれたボイルド(堅茹で卵)の最期の言葉とシェル(殻)が捨てた記憶が胸を撃つ。辛くても生きたいという思いと尊厳、自分の澱の対峙による再生の物語。2012/10/02
背古巣
38
圧縮を文庫本で読んで、続きを…と思ったら、三分冊をまとめ、大幅に加筆修正した本作品の存在を知り、読む。ある目的のため、カジノに乗り込み、勝負を挑む。その緊張感と疾走感。私としてはここが一番面白かった。ラストのボイルドとの決戦は、三次元での動きがイメージ出来ず、消化不良。でも、面白かったです。2022/10/01