ハヤカワSFシリーズ
冬至草

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  • サイズ B6判/ページ数 305p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784152087355
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

北海道・旭川の郷土図書館で見つかった新種の植物“冬至草”の押し葉。太平洋戦争期の在野研究者が遺した記録から、ウランを含んだ土壌に生息して人間の血液を養分とする異様な生態が明らかになっていく―科学という営為の光と影を追究した表題作、異端の天才科学者の半生が浮き彫りにする論理と倫理の相克「アブサルティに関する評伝」、終末医療の情景を宇宙的な死生観から綴った芥川賞候補作「目をとじるまでの短かい間」ほか、全6篇を収録。架空の動植物を媒介にして、生命と科学の本質を描きだす理系小説の完成形。

著者等紹介

石黒達昌[イシグロタツアキ]
1961年北海道生まれ。東京大学医学部卒業。1989年、「最終上映」で第8回海燕新人文学賞を受賞してデビュー。以降、東京大学付属病院外科に勤務する傍ら、純文学誌を中心に数多くの中短篇を発表。1994年、架空の動物ハネネズミの生態をレポートした横書き小説「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに…」が芥川賞候補となり、大江健三郎氏、筒井康隆氏の絶賛を浴びた。同作および続篇を収録した『新化』や『人喰い病』などの作品集により、生物学・医学と文学を融合させた作家としてSFファンの注目も集めつつある。現在、テキサス大学MDアンダーソン癌センターに助教授として勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ミツ

10
佳作。これは良いなぁ。医者と作家、二足の草鞋を履く著者によるブラックな苦みのある6つの中短編。カチッとして明晰な文書で語られる数々の物語は単なるSFではなく、ミステリー、オカルト、純文学、それぞれ独特の味がある。未知なる生物に魅せられた男の悲劇「希望ホヤ」「冬至草」、手に月が宿った男の思索「月の・・・・」火の玉怪死事件の謎「デ・ムーア事件」地方医師のゆっくりとした日々「目を閉じるまでの短かい間」ある天才科学者の生きざま「アブサルディに関する評伝」どの作品も総じて質が高く、読ませる。久々にいい作品集でした。2011/05/05

三柴ゆよし

9
科学と妄想の狭間に位置する、これぞ真正SF……なのか。個人的には、人間の血液を養分とする放射性植物の生態と、それにまつわるドラマを描いた「冬至草」、タルホチックな綺想から存在と認識に関わる省察へと至る「月の・・・・」が好み。その他の作品もおおむね高水準で、短篇集としてのまとまりもよい。存在しない植物を解説するのにこれまた存在しない植物を引き合いに出すという徹底ッぷり(ハイアイアイ群島のオニハナアルキ!)からは、ボルヘスやレムとの親近性もうかがえる。2011/05/18

エル・トポ

8
著者はテキサス大学癌センターに助教授として勤務。医学的、科学的な描写が説得力があり、荒唐無稽にならない)。「希望ホヤ」ひたすらに文献を読みまくり、世界中の人々よりも、ただひとり自分の娘を救う事を優先させたダンの選択。私にも似たような経験がある。「冬至草」孤児であり、才にも恵まれず、身体的障害を負った男が、新種の発見に取り憑かれ、放射性物質を生体濃縮する植物を追った。その人生を辿る。お涙頂戴ものではなく、冷えた筆。「月の…」はコメディのようでありながらそら恐ろしさを感じる。医学的な成る程、という知識も随所。2021/01/19

背表紙裏

6
科学論文形式のSF。突飛なSF要素は少なくまさに論文を読んでいるような感覚を覚える。作品としては生死感を扱った詩的な部分が強く感じられ、理性的な叙事詩といた雰囲気が新鮮。2011/08/07

inugamix

6
石黒達昌初読。明晰きわまりない文章、専門分野の知識と経験を生かした完成度の高い“見てきたような嘘”。フィクションであることを忘れかねないやばい。「希望ホヤ」「冬至草」「デ・ムーア事件」「アブサルディに~」、いずれもウェット感を抑えた表現がサスペンスフルでしかも胸を突く。放射性の環境で生きる植物の典拠にハイアイアイ群島が出てくるに及んで、図書館の順番待ち予約図書を解約してありったけ借りた。2009/12/12

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