内容説明
1986年、経済恐慌と戦争と疫病とに見舞われた人類は、滅亡へと向かった。だが、〈世紀の大自然クルーズ〉と称するガラパゴス諸島遊覧の客船バイア・デ・ダーウィン号はエクアドル崩壊の直前に、奇妙な巡り合せの男女を乗せて港を漂い出ていた。船長、女教師、結婚サギ師、身重の日本人妻、盲目の娘、6人のインディオの少女たち。進化論で有名なガラパゴス諸島に孤立した彼らとその子孫が、百万年かけて遂げた新たな進化とは?いつにもまして素晴らしいヴォネガット節が冴える、書評子絶賛の最新傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひと
5
1986年、世界的経済恐慌と戦争が勃発するなかエクアドルからガラパゴス行きの船が数人を乗せて発進する。ガラパゴス諸島にたどり着いた数人以外人類が滅亡したなか100万年後、子孫たちはどう進化を遂げたか?というような内容。ヴォネガットらしい皮肉とユーモアに満ちた作品でした。2023/09/30
スターライト
4
本書が出版された86年は、アメリカ・レーガン大統領がSDI構想により”ソ連の脅威”に対抗していた冷戦の時代。ソ連はゴルバチョフによる改革路線が進展しつつあったものの、核戦争の可能性は高まっていた。そうした国際情勢を背景に、人類の愚行を鋭く告発するだけでなく、持ち前のユーモアも織り交ぜながら人類への信頼を高らかに謳いあげた野心作。100万年後から幽霊となって1986年の人々を観察するというスタイルで、ヴォネガットは見事に彼の思想を文学へと昇華させた。2024/09/26
tsukamg
4
解説で『猫のゆりかご』との類似が指摘されていたが、むしろ『タイタンの妖女』の方が似ていると思った。ガラパゴスツアーは火星軍志願、サンタ・ロサリア島でのその後はタイタンでの暮らしにそっくりだ。『猫のゆりかご』との類似は人類滅亡という展開で、いわば「バカは死ななきゃ治らない」の人類版だ。それにもかかわらず、スウェーデン人医師から父キルゴア・トラウトの名を聞いて涙する息子の場面では、そんな人類が愛おしくなる。2023/01/26
海さん
1
9冊前に読んだ本でカツオドリ見たい!と一人盛り上がっていたらまた出てきた。どこかで会いたいなあ。話があちこち中途半端に飛んで、置いてけぼりにされたような気がしてたけど、後半見事にまとまって、人類はこうやって進化したんだな(?)と思った。2024/09/18
(ま)
1
巨大脳が紡いで破滅させた世界でガラパゴスに取り残された人類が新たに進化を始めるとき そしてマンダラックスの箴言2022/08/11