感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
285
上巻でのシカゴがもっと重要な意味を持っているものかと思っていたが、下巻では物語の舞台をメキシコに、さらにはパリへと移してゆく。まさにタイトルに相応しい冒険行ではある。また、この間にソフィー、スィアと、そしてステラとは結婚するなどオーギーの内面的な意味での変化と冒険も果たしてはいる。ただ、トータルに見るとオーギーを主人公とする、この一種のピカレスクロマンの目指していたところはよくわからない。それは、構成意識の希薄さにも起因するように思われる。2023/03/12
ケイ
79
後半になると、オーギーに対し、そろそろ冒険もこのくらいにして落ち着けば?と言いたくなるほど次々とくる彼の冒険や移動についていくのがしんどくなった。冒険というものは読んでいてワクワクするものだが、ある程度の長さになると緩急つけてもらわないと、読み手も少しあきてくるものだなと思う。勿論、面白くないわけではないが。解説を読んでみるに、書かれた時点では突き抜けたユダヤ小説らしい。類するものがなかったのに敢えて書いたところに意義があるのだろう。2015/11/26
NAO
68
アメリカに移住してきたユダヤ人移民たち。二世にあたるサイモンやオーギーは、不況のアメリカで、なんとか自分の地位を確立しようとしている。サイモンを通して描かれるのは成功への道で、オーギーを通して描かれるのが大不況下のシカゴの様子だ。荒唐無稽な逸話も織り込まれているため、話はひどくとりとめもない感じで、読みにくかった。2020/01/19
秋良
13
【G1000】良く言えば素朴、悪く言えばフワフワしたオーギーは、詰めの甘さと流されやすさで漂泊する。兄のサイモンは社会的成功を収めるが空虚な生活を送り、兄弟の生き方は対照的になっていく。ハーツォグを挫折しフンボルトも苦行だったのにオーギーはわりと平気だったのは、マダオ(まるで駄目な男)ながらも愛されキャラの主人公のおかげかもしれない。2021/03/13
takeakisky
1
中盤を越え、筆はのってくる。が、饒舌に過ぎて胃にもたれてくる。一人称だと逃げ場が無い。メキシコでの暮らしぶりがこんなに長いのは何か訳があるのだろうか。申し訳ないが読む方もダレダレに。風の街が懐かしい。やっと戻るがドリフトは終わらない。彼のいう人生についての勧告と範例をひっさげてしつように現れてくる人物たちも前半とは異なりオーギーの人間形成に大きな影響を与えることもない。自我が固まるにつれそうなることは当然だが一抹のさびしさ。この辺りの現実味には、現代の小説だなあと感ずる。そして宙ぶらりんな感覚を残した終幕2022/12/17