出版社内容情報
推理小説好きの文学少女・陸秋槎と、孤高の天才数学少女・韓采芦の2人の謎解きを描く連作短篇、全4篇を収録! 解説:麻耶雄嵩
内容説明
高校2年生の“文学少女”陸秋槎は自作の推理小説をきっかけに、孤高の天才“数学少女”韓采蘆と出逢う。彼女は作者の陸さえ予想だにしない真相を導き出して…“犯人当て”をめぐる論理の探求「連続体仮説」、数学史上最大の難問を小説化してしまう「フェルマー最後の事件」のほか、ふたりが出逢う様々な謎とともに新たな作中作が提示されていく全4篇の連作集。華文青春本格ミステリの新たなる傑作!
著者等紹介
陸秋槎[リクシュウサ]
1988年北京生まれ。復旦大学古籍研究所古典文学専攻修士課程修了。在学中は復旦大学推理協会に所属。2014年、雑誌『歳月・推理』の主催する第二回華文推理大奨賽(華文ミステリ大賞)で短篇「前奏曲」が最優秀新人賞を受賞。2018年に“読者への挑戦”が二度挟まれた本格ミステリ『元年春之祭』が小社より邦訳刊行され、“本屋大賞”翻訳小説部門第2位、“本格ミステリ・ベスト10”第3位、“このミステリーがすごい!”第4位ほか年末ベストテン企画上位を席捲し、高い評価を得る
稲村文吾[イナムラブンゴ]
早稲田大学政治経済学部卒、中国語文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
黒瀬
165
小説の体裁をとっているが、推理小説とは斯くあるべしと問い掛けているような、はたまたもっと自由なのだと訴え掛けている意欲作のように感じた。風変わりな天才数学少女・采盧(さいろ)と自作の推理小説を発表する秋槎(しゅうさ)の関係はどことなくラノベにありそうでこれがキャラ文芸としても成り立っていることを証明していた。なるほど推理小説を数学的に紐解くとそうなるのかと、まったく新しい価値観を植え付けられたようで新鮮な読者時間でした。ルームメイトの姝琳(しゅりん)を交えた百合三角関係もエクセレント😎2021/03/10
ひさか
132
2014年から2019年までに中国の雑誌などで発表された連続体仮説、フェルマー最後の事件、不動点定理、に書き下ろしのグランディ級数を加えて、2019年4月中国で出版。翻訳して2020年12月ハヤカワミステリ文庫刊。タイトル通りの少女達が作中ミステリをややこしく楽しく面白く考察するお話。少女達の会話としぐさにある華の部分と会話内容にある面倒な考えに翻弄されてしまいます。面白く不思議で、ちょっとついて行けないような世界でした。2021/02/23
神太郎
131
オススメされて読んでみました。ザ・ミステリー愛!連続体仮説を読んで思いました。陸秋槎が書いた校内誌の犯人当てに対してここまでミステリー論をそれも数学の理論と絡めてぶつけてくるなんて!何て挑戦的で贅沢なことをと思いながらそこからは、立て続けに残りを読み終えていきました。作中作を効果的に使いつつ、ミステリーを論じ、時たま現実世界でも事件に巻き込まれる。でも、現実では推理小説ほどうまい推理なんてできるはずもなく……。そう言う感じがまた何ともいい味だしてるなぁと。野心的で好感が持てる作品でした!→続く2020/12/25
buchipanda3
128
ミステリ書きの陸秋槎と数学の才を持つ韓采蘆、二人の女子高生による本格推理談義と数学談義が折り重なる華文青春ミステリ小説。こういった論理遊びは好み。さらに推理小説論も詰まっていてなるほどと。中身は犯人あてゲーム的な作中作を通して、本格ミステリ小説の不完全性を数学の理論に当てはめながら思考する展開。秋槎のセリフはそのまま著者の推理作家としての苦悩でもあり、本作はその壁をぶち破ろうという試みに感じられる。それもある意味青春かも。どの篇も終わり方に解放感があって、束縛されないミステリの楽しさを再確認できた。2020/12/06
えにくす
120
★★★☆☆中国アンチミステリー連作短編集。文学少女・陸秋槎と数学少女・韓采蘆のコンビの物語。秋槎の書いたフーダニット短編を采蘆が数学的計算で犯人に該当しない人物を排除し、可能性が残ったのが犯人だとする消去的方法だ。一般のミステリーで重要視される動機が一顧だにされない為、従来の感覚では分からない。有理数や整数や代数幾何学といった、文系には難しいところは飛ばして読まないと、読破は難しい。物語の間に現実の事件も入り、最後の短編では殺人事件も発生するが、ラスト二行の終わり方に驚く。まさにアンチミステリーだ。2021/02/28