内容説明
解剖に使用できるのは死んだ奴隷か死刑囚のみ―それでは医大での研修がままならず、医師は禁断の手段にでる。奴隷に墓から死体を盗掘させ、それを解剖用に使うのだ。当初、奴隷ニーモは死体を掘り出すだけの役目だった。が、刃物の扱いに長けたニーモは、やがて解剖学の教鞭を執るまでになる。死体を解剖しているだけならよかったが…1857年のアメリカ。医学が妖しい影に覆われた時代の、裏歴史をめぐるサスペンス。
著者等紹介
グイン,マシュー[グイン,マシュー] [Guinn,Matthew]
ミシシッピ州ジャクスン在住。2013年に発表した『解剖迷宮』でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞にノミネートされた
友廣純[トモヒロジュン]
1974年生、旧東京都立大学史学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青蓮
104
本書は現代と19世紀後半、2つの時代を軸に展開していく「解剖」と言う医療の暗部に焦点を当てた物語。19世紀後半という時代、解剖用の遺体を調達するのは容易では無かった為に奴隷を使って墓から死体を盗掘させていた。それ等の人骨が時を経た現代、古い校舎の地下から発見される。負の歴史を無かった事にしようと揉み消そうとする大学、それに抗い奔走する医師、墓暴きをする黒人奴隷ニーモの生涯。時代が産んだ悲劇を鮮やかに描いた傑作。医療の発展の裏にはこんなにも残酷で悲しい事があるのだとしみじみ思いました。それを忘れてはいけない2017/05/12
絹恵
37
"存在しない者"が葬られた者を掘り起こすことと、歴史の裏側の秘匿された真実を暴くことは、似ているのかもしれません。だからこそ私たちは学び続けることが出来たから、"開かせていただき光栄です"という謝辞と矜持を持って向き合わなければならないことなのだと思います。魂の輝きの数だけ眠る魂があることを忘れてはならないと自らの魂に刻みます。2015/05/22
那由多
10
タイトルのイメージとは全く違い、アメリカの歴史の暗部を描いた作品。復活師の存在は知っていたが、大学の教授団によって購入された奴隷、校舎の地下室から発掘された人骨、死後においても強いられる差別、拒否権のない黒人に同胞の遺体を盗ませるといった事実とモデルの実在の衝撃に慄いた。医学の発展とは、常に残虐と隣り合わせなのだろうか?2017/12/30
とびを
6
タイトルとイメージ違う。 こんな世界もあったのかしら。 映画のゲットアウトが頭をよぎった。2021/02/10
とし
3
邦題の怪しさから躊躇していたが、読み応えのあるとても面白い深い小説でもっと早く読むべきだったと後悔するくらい。しかも後書きによって実話がもとになっている事を知り、より深い感慨と悲哀を覚えるものとなった。2019/04/24