内容説明
警官志望のキャシーが助けを求める女性のもとに赴いた時、その胸にはナイフが突き刺さっていた。彼女はレイプ未遂犯の仕業だと主張するが、刑事は彼女の自作自演と断定した。だが6年後、事件は新たな展開を見せる。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」をはじめ、一人の男を射殺した巡査の苦悩を切々と描く「完全」など、5人の女性警官を主人公にした魂を揺さぶる10篇を収録。大反響を呼んだ傑作集。
著者等紹介
ドラモンド,ローリー・リン[ドラモンド,ローリーリン][Drummound,Laurie Lynn]
テキサス州ブライアン生まれ。ヴァージニア州北部で育ち、ニューヨーク州イサカ・カレッジで演劇を専攻する。ルイジアナ州立大学警察の私服警官を経て、1979年に同州のバトンルージュ市警に入り、制服警官として勤務したが、交通事故に遭い、辞職する。その後ルイジアナ州立大学で英語の学士号と創作の修士号を取得した。「傷痕」で2005年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞。オレゴン州在住
駒月雅子[コマツキマサコ]
1962年生、慶應義塾大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
72
アメリカの女性警官5人について、その警察官としての生き方を淡々と描く。少し離れてみた視線で、その仕事のツラさ、覚悟、そして判断の難しい状況に置かれた彼女たちの様子が書かれる。いわゆるミステリーや警察小説とは明らかに違い、全体的にモノクロな感じ。2014/06/07
セウテス
66
女性警察官を主人公においた連作短編。警察小説であり、ミステリーと言うよりは純文学に近い。警察官としての日常を淡々と描いていますが、そこは私達とは違う日常の緊張感を、遺体の様子や拳銃の重みなどを表現して、巧みに伝えようとしています。女性である事、命の危険に向き合う仕事であるのに、世の中の体制として彼女らに当たり前の事が寄り添っていない。その中で高い意識を持って仕事をこなそうとする彼女らの、心の機微が良く分かり、たまらない気持ちになる。警察小説を読む以上、こうした現実にしっかりと目を向ける事は大切だと感じる。2016/08/18
いちろく
60
紹介していただいた本。ページを捲る前に「ハヤカワ・ミステリ文庫」からミステリの印象があったので、良い意味で裏切られた。ページを捲る度に、警察機構に所属する女性達の「職務における日常」を描いた作品へと印象が変わった。 あまりにも当たり前の様に表現される世界観に、何故このような作品が描けるのか?と浮かんだ疑問も、著者自身が婦人警官としての勤務歴がある事を知り、納得出来た事も多々。職務における内面の描かれ方が、単なる職業小説とは一線を画している。2017/12/27
*maru*
58
読み手の心をグリグリ抉り掻き回すような語り口。一切無駄がなく淡々としているのに、ちゃんと血の通った文章と言えば伝わるだろうか。5人の女性警察官を主人公とした短編集だが、ミステリー要素は薄い。その時何が起きたのか、あるいはその後どうなったのか…人生の歩み、人生そのものを描いた作品だった。同性が主人公なので共感できる部分もあるが、正直まだちゃんと咀嚼しきれてはいない。解説で池上氏も書いているように、読了後『完全』を読み返したくなる。『完全』『制圧』『傷痕』『生きている死者』が特に心に残った。2019/11/27
タツ フカガワ
55
表題はミランダ警告の一節で、5人の女性警察官が主人公の、ちょっと異色の警察小説の短篇集(著者は元警察官のキャリアもあり)。パトロール課や交通課の制服警官ながら、彼女たちが遭遇する銃社会アメリカにおける警察官の危うい環境がとにかく生々しい。そうしたなかで職に殉じる者、つまずく者、ある決断を迫られる者たちのドラマがこれまた濃密。なかでも「キャサリン」と「サラ」の章がとてもよかった。2023/02/23