内容説明
恋愛に縁のない貧乏青年・磯野のアパートに学生時代の仲間が転がりこんできた。磯野の新しい職場は「鳩航空事業団」。そこでは鳩が恋文を運ぶ伝書鳩サービスを提供している。ある日、伝書鳩が「クラウジウス団」なる連中に拉致されてしまう。彼らの目的は「この世のあらゆる恋愛を妨害すること」。磯野は無事に鳩を相手に届けられるのか?かくして鳩を巡るナンセンスな闘いが幕を上げた。第1回野性時代フロンティア文学賞受賞作。
著者等紹介
松尾佑一[マツオユウイチ]
1979年大阪府生まれ。大阪大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。現在は研究職に従事している。大阪府在住。2008年「かっぱ塾へ行こう!」で第4回青春文学大賞最終候補。09年に本作で第1回野性時代フロンティア文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちはや@灯れ松明の火
46
浪速の空に鳩が翔ぶ。迸る恋心が綴る文字を胸に抱き、逆走する嫉妬が企む妨害の危険に身を晒しつつ。仕事も金もない非モテ系男子、あるのはドイツ軍服男&天然娘の失職中居候2人。そんな彼が平和と友愛の象徴・鳩のお導きで入社した『鳩航空事業団』と、他人の恋路を血の落涙と共に邪魔する『クラウジウス団』との攻防戦の火花が散る。そして高きから低きに流れるエネルギーの原理に従うように、モテピラミッド最下層に蹲る彼等に怒涛の如く押し寄せる恋の力は偉大なり。鳩が紡ぎし人の縁、今日もまた青空に想い託され鳩が舞う。2010/08/09
しょこら★
28
エネルギーはかならず、高い方から低い方へと流れていく――。恋愛…人と関わることを避けるコミュ障気味な青年二人と、不思議ちゃん乙女がひょんなことから一つ屋根のしたに。鳩が荷物を、恋文を運ぶ『鳩航空券事業団』。他人の恋路を邪魔する『クラウジウス団』。一見バラバラに見えて、繋がっていく、というか敵対していく?人は易きに流れる、恋愛なんかくそくらえ!!三団体の無意味でカオスなお話。ちょっともりみーっぽい。鳩は平和の象徴だし、こんな読書もたまにはいいかな。笑2013/03/29
nyanco
28
ドイツ軍の軍服を普段着としているロンメルや、犬さんといったサブキャラは魅力的なのにやや活かしきれていないのが残念。舞台を大阪に変えたモリミーの四畳半的な感じも否めない…。主人公の初恋・夜羽子とのエピソードなども未回収で、面白い場面もあるのだが、やや散漫。吉本の屋上にあると言う「鳩航空事業団」の業務内容、クラウジウス団の派茶目さや犬さんとロンメルの話など、この辺りに絞り込めばなかなか面白いと思うのだが…。せっかくのモチーフを活かしきれていないのが残念。続→2010/06/05
キキハル
27
天上天下唯我独身!モテない男たちの僻みとやっかみで結成されたクラウジウス団のスローガンが面白い。伝書鳩を利用した鳩航空事業団だなんて設定も奇抜。真っ白な鳩が、その鳩胸に恋文を抱えて飛ぶのがとてもロマンチック。ユニークな登場人物たちが、苦悩しながらも少しずつ変化を見せる。それでも若者よ。恋も大事だが、もっとしなければならないことがあるだろうと、背中を叩いてハッパをかけたくなる。さて・・・誰に鳩を飛ばそうか。2010/07/07
佳容
26
「しかし、僕は体温を持ってしまった」磯野のこの言葉に、胸を突かれた。エネルギーとは必ず高いほうから低いほうへと流れてゆく。それがすなわち”クラウジウスの原理”だ。そこここにモリミー的な匂いが漂うが、軍服のロンメル、天然乙女の犬さん、そして磯野のキャラが何とも良かった。3人が肩を寄せ合って暮らす様が、何だか愛しくて、いつまでも見ていたかった。伝書鳩で恋文とは!その発想、私的にはかなり、ナイス☆2010/07/15