内容説明
故郷を捨てカリフォルニアへやってきた若者は、映画のスタント・ドライバーとなり、やがてその卓越した運転の腕を裏社会の面々に買われ、逃走車輛の運転手稼業に手を染めるようになっていた。そんなある日、彼が参加した強盗計画が仲間割れから無残な失敗に終わる。命からがら逃げのびた彼は車だけをパートナーに、裏切りの黒幕を追って走りだした―斬新な感性でクールに描く衝撃のクライム・ノヴェル。
著者等紹介
サリス,ジェイムズ[サリス,ジェイムズ][Sallis,James]
1944年アメリカのアーカンソー州ヘレナ生まれ。ミシシッピー川のほとりで育ち、ニューオーリンズのチューレーン大学に進み、その後はアイオワやロンドンへ移り住んだ。25歳で初の著作集を出版。詩人、小説家、批評家、エッセイスト、音楽学者、ミュージシャン、翻訳家、脚本家、呼吸療法士など、さまざまな願を持つ。ミステリ作家としては、ニューオーリンズ黒人探偵ルー・グリフィンを主人公としたシリーズを代表作とし、英国推理作家協会賞をはじめ多くの賞にノミネートされた。現在はアリゾナ州フェニックス在住
鈴木恵[スズキメグミ]
早稲田大学第一文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
131
ゴズリング主演の映画は何度も観ていて、その原作がある事を読み友さんから知り手に取った。ドライバーが抜群に運転が上手いということ、それとロスの登場人物達との関係以外は、後半は特に全く違う話だった。しかし、ドライバーの冷静さと、感情を露わにしない愛情の示し方がどちらにもあり、ともに素晴しい。シビれるなんて言葉は古臭いが、この原作にも映画化された作品にもその言葉が相応しいと思う。近いうちに原語で再読したいと。2017/06/30
MICK KICHI
96
濃縮された描写、場面展開の素早さ、ある意味プロット自体がドライブ感覚で徹頭徹尾表現される。バイオレンス描写も所々あるが凄惨を感じない。主人公ドライバー(と呼ばれる男)の冷徹さが淡々とした文体で表現される。生い立ちも両親の間に起きたある狂気しか語らず、それが彼に影を落としたと暗示されるのみ、人生は混乱と転変と動揺が支配するだけとの信条が行動を規定するかのように...。凄腕のカースタント・ドライバー、設定の一部を借りて映画化されるが、小説の良さと映像の美学が別の次元で交差する。別物ではあるが根底は無常観。2019/02/26
harass
65
190ページの2005年発表のクライムノヴェル。映画のスタントドライバーや犯罪の運転役で生きる凄腕の主人公。強盗計画で予想外の金額の現金を手に入れるのだが…… 映画化で再販された実力派作家の作品だそうで、巧みな言葉遣いと人物描写でクール。なかなか感心。映画はこの原作と少し違うらしいが、傑作のようで機会があれば見てみたいものだ。2017/05/13
ずっきん
51
恵まれたとはいえない少年時代。スタントドライバーからやがて犯罪に手を染めていき、、、というストーリーを時系列もバラバラに各場面を切り貼りしていく。映画を読んでいるような印象的なシーンの連続で、だからなのか章ごとの余韻がすごい。削りこんだ文章が頭の中で色鮮やかに踊る、クールで切ないクライムノベル。これは再読する予感。2018/06/11
GAKU
32
裏社会で逃走車輛の運転手稼業に手を染める、若く孤独なスタントドライバーが主人公。裏切った黒幕に復讐を果たしてゆく。作中でもドライバーとしか書かれておらず名前は出てきません。登場人物もごく僅か。短い章で進行してゆく今に過去がカットバックされ200ページ程の短い作品ながら、濃縮され密度の高いクールなクライムノベルとなっている。1ページ目の「三人の偉大なアメリカ人作家、エド・マクベイン、ドナルド・ウェストレイク、ローレンス・ブロックに」の表記でもう期待大でした。ライアン・ゴズリングで映画化もされています。2015/09/06