出版社内容情報
生きることを問いかけた三好十郎の代表作。長塚圭史演出、松田龍平らで秋に舞台化。
内容説明
東京郊外の高い台地に建つ三階建ての家。焼夷弾が落ち、荒れるにまかせ、なかば崩れかけている。現在使える部屋は七つ八つ。そこにこの劇の語り手で先生と呼ばれる「私」をふくめて9人が暮している。「私」を訪ねたのは“創造としての芝居を生きてみよう”として果たせなかった須永。「冒した者」という“創造としての芝居”を通じて戦後日本人の心の荒廃と絶望、そしてかすかな希望を見つけようとする。
目次
冒した者―Sの霊に捧げる
あとがき(三好十郎)
『冒した者』演出メモ(三好十郎)
『冒した者』演出ノート(長塚圭史)
著者等紹介
三好十郎[ミヨシジュウロウ]
1902年、佐賀市生まれ。劇作家・詩人。複雑な家庭事情により孤児として少年期を過ごし、苦学して佐賀中学校を卒業。その後上京し、早稲田大学文学部に進学。在学中の24年、『早稲田文學』に『雨夜三曲』など詩5篇を発表、詩人としてデビュー。卒業後、28年『左翼藝術』に処女劇曲『首を切るのは誰だ』を発表。続けて同年、『疵だらけのお秋』を全日本無産者芸術連盟(ナップ)の機関紙『戦旗』に連載、プロレタリア劇作家として脚光を浴びるが、マルクシズムに疑問を抱き、34年の『斬られの仙太』で転向問題を提起(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りえこ
18
こんなに読みやすくてひきこまれる戯曲だとは知りませんでした。面白かったー。舞台観たかったな。2014/05/27
nightowl
1
それぞれに事情を抱えながら危ういバランスで同居していた人々。そこへ訪ねて来た者が均衡を崩したことから、各人の本能が剥き出しにされる。皆川博子作品や萩尾望都「エッグ・スタンド」に登場する、自分が生きているのか死んでいるのか分からない感覚を持った人物を男性側から書いた戯曲。こうした作品を読む度に、自分にとっての生きている実感とは?と考えされられる。男性ならではの生真面目さが全面に出つつ、ラストは前出作品に負けず劣らず悲しげで幻想的。近年の舞台版キャスティング、是非とも見てみたかった。2017/06/24
たわたわ
0
この時代の思想を知るには良き それを知ることで現代の自分たちの思想にも気付けるので良い 現代の概念は変わっていく 冒す者も冒さる者も紙一重2020/03/06