ハヤカワepi文庫<br> 権力と栄光―グレアム・グリーン・セレクション

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ハヤカワepi文庫
権力と栄光―グレアム・グリーン・セレクション

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  • サイズ 文庫判/ページ数 461p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784151200298
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

戒律を冒した神父はそれでも神聖なのか?酒を手放せず、農家の女と関係を持ち私生児までもうけてしまう通称「ウィスキー坊主」は、教会を悪と信じる警部の執拗な追跡を受け、道なき道を行く必死の逃亡を続けていた。だが、逮捕を焦る警部が、なじみの神父を匿う信心深い村人を見せしめに射殺し始めた時、神父は大きな決断を迫られる―共産主義革命の嵐が吹き荒れる灼熱の1930年代メキシコを舞台にした巨匠の最高傑作。

著者等紹介

グリーン,グレアム[グリーン,グレアム][Greene,Graham]
イギリスを代表する作家であるとともに、20世紀のもっとも偉大な作家のひとり。1904年10月2日、ロンドン北西のバーカムステッド生まれ。オックスフォード大学卒業後、1926年から「ザ・タイムズ」に勤務。1929年に『内なる私』で文学界に登場した後、「ザ・タイムズ」を退社して作家活動に入る。第二次大戦中は情報活動に従事していた。『ブライトン・ロック』(1938)と『権力と栄光』(1940)で作家としての地位を確立し、『事件の核心』(1948)、『情事の終り』(1951)で世界的な名声を得た。代表的なカトリック作家で、自らの作品を「ノヴェル」と「エンターテインメント」に分類したことでも知られる。1991年4月3日死去

斎藤数衛[サイトウカズエ]
1916年生、1940年京都大学文学部英文科卒。英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まふ

98
グリーンのマジメ分野作品の代表作。共産主義革命によりカトリック教会は偽善・困窮・迷信の廉で全面禁止、破壊・追放が行われ、司祭たちはことごとく殺され、生き残った二人のうち一人は「転び」還俗して妻帯する。もう一人の司祭(主人公)は愛人との間に娘を作ってしまうアルコール中毒のナマグサ坊主である。追いかける警部は血も涙もない男で教会全滅に執念を燃やす…。世界の吹き溜まりのようなメキシコのタバスコという田舎町での出来事だが、思い起こすのはカトリックの堕落と放縦の状況である。G1000。2023/11/11

ベイス

58
キリスト強的倫理観の支配する社会にとっては不良とされる過度の飲酒や女性関係が、共産主義的倫理観の支配する社会では主人公はそうとは気づいていないが精神的な拠り所となる。どっちにしろ極端すぎる「潔癖社会」への反抗?2023/01/04

nobi

39
宗教迫害下、逃避行を続ける司祭。飲酒と私生児という破戒。人質が連れ去られることへの言い訳じみた抵抗。時に人々のいたわりがあり子供のくっきりとした存在はあっても、太陽が照りつけるか容赦ない雨を降らせるメキシコ南部の地で、彼に与えられるのは渇きか泥水でしかない。およそ殉教とは程遠く、そのモノローグはみじめこの上ない。それでも繰り返される自問自答は次第にうねりとなっていった。あるきっかけで驢馬の向きが変えられた。未練を解いた瞬間。決断したというより身を委ねたように見える。非連続の位相。その潔さに心揺さぶられた。2016/09/03

Ryuko

37
メキシコ版「沈黙」と思いながら読むが、こちらは1940年の作品。遠藤周作がこの作品に影響をうけたことは想像に難くない。裏切者のユダである混血児はキチジローを思わせるし、捨て鉢になっているホセ神父はフェレイラを思わせる。ただ、こちらのパードレは、酒好きで、姦淫も犯す不良司祭だ。決して聖人ではない主人公を描きながらも、少年が信仰を深くするシーンで物語を結んでいるところにグリーンのキリスト教への思いが込められているように思う。「ブライトン・ロック」と「沈黙」を再読したい。2019/03/16

田中

33
メキシコ国内の宗教弾圧により逃亡するしかない司祭は辺鄙な荒地や貧村を移動する。「神の力と栄光」とは何かを一人の酒好き司祭をとおして神話的にあらわしたようだ。自分は、「司祭」に値しない大罪人であると自問しながらも、困窮する人々に箴言する姿は、聖徒のようでもある。極めて世俗的な行為と根源的な信仰の狭間で神をいつも意識している。警部との対話では、信仰と正義は立場によって離反するように考えられた。僕は、キリスト教の典本知識がないので、充分には理解できないが、聖句のような名言は、とても印象に残る。 2022/08/10

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