出版社内容情報
古今東西の神話・民話に登場する英雄たちの冒険を比較・分析し、その基本構造と共通性から人間の心の深層に迫る神話論の決定版
内容説明
神話の膨大なサンプルを分析した結果、英雄神話には「出立→イニシエーション→帰還」という驚くほど一貫した共通パターンがあることが見えてきた。私たちはなぜ、今もなおこれらの構造を持った物語に魅了されるのか?フロイトやユングの精神分析論を用いながら、民族や時代を超えて人間の心に潜む普遍的欲求を明らかにしていく神話論の決定版。小説、映画、ゲーム他、物語の本質を読み解く鍵がここにある。
目次
第1部 英雄の旅(承前)(帰還;鍵)
第2部 宇宙創成の円環(流出;処女出産;英雄の変貌;消滅)
エピローグ 神話と社会
著者等紹介
キャンベル,ジョーゼフ[キャンベル,ジョーゼフ] [Campbell,Joseph]
1904年、ニューヨーク州生まれ。コロンビア大学で哲学・神話学を専攻。パリ大学とミュンヘン大学でも学んだ。サラ・ローレンス大学で長年教職につくかたわら、世界各地の神話の比較研究に多くの業績を残し、斬界の第一人者として活躍した。1987年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
98
宇宙創成の円環は毎日至る所で感じている。1日の半分以上はルーティンで賄っているものであるし、人生なんて生成と消滅の繰り返しだ。フロイト派の精神分析学理論によると、私たちは誰でもどの時代も無意識のうちに父を殺し、母と交わっているという。『死者の書』『神話の法則』気になる。神話の力、私の前では効力はないようだ。美しさと柔軟さに欠けるからだろう。2021/03/06
wiki
38
終始、世界の神話に関する前提知識が足りないせいで難しい。日常から不思議な空間へと冒険に進み(出立)、途方も無い力を手に入れ(イニシエーション)、現実世界へと舞い戻ってくる(帰還)。同じ典型を、様々な神話や伝説が持っている。法華経にも同様の事が描かれる。二処三会などまさにその旅を示唆しているように思う。仏の願いは「如何令衆生。得入無上道。速成就仏身。」であったが、英雄たる自分だけでなく、その周囲の弟子たちまで"英雄"にしようとした者は、他の神話や伝説の中にどれほどいたのか、またはいなかったのか、気になる。2019/08/15
彩菜
34
下巻では神話宇宙の創成がまさに覚醒→夢→無意識の普遍の意識の流れとして理解される事、英雄像が時代に応じ変化する事を確認する。神話と夢は共に無意識から生まれ文法も同じだが、神話は意識的に制御され何時も同じある種の精神的原理を表していると著者は言う。私達は個人であり人間の全体像の一断片だ。時に子で親で聖職者で泥棒で…同時に全てである事はできない。全体像は社会の内にあり、共同体への参加を意味するイニシエーションの儀礼が個人と集団が同じである事を表す。同時に人は誰しも自分の中に全てを持っており→2022/02/28
ヨクト
32
いやー面白かった。人の成長の物語は本質は古来から現代まで一貫し、それが手を変え品を変えて、それぞれの物語として成り立っている。イザナギ・イザナミの物語など日本の物語もそうである。本書が示す物語のプロットはジョージ・ルーカスに影響を与え「スターウォーズ」が生まれたらしい。確かに言われてみれば、スターウォーズの物語はまさに、である。2016/02/09
小木ハム
30
まず著者の言う民話をググっても何も出てこないところに深淵を見る(水差し少年が読みたかった)。現代の英雄は、資本主義であったり、現政権であったり、所属する組織の長であったり、自らの価値観であったりするのかもしれない。英雄は、いつか専制君主として龍に姿を変える。それは百年後かもしれないし、明日かもしれない。その時行われる改革=父殺しである。神話の普遍性は、ひとつのアルゴリズムと言って差支えないのではないだろうか。陰と陽の円環を描き続ける永久機関、その車輪を回すのは、いつだって千の顔を持つ"独りの"英雄である。2019/07/31