内容説明
冷えきった地球を救うために太陽から“火”をもち帰ろうとする宇宙船を描いた表題作「太陽の黄金の林檎」。灯台の霧笛の音を仲間の声だと思い、毎年海の底から現われる古代生物の悲哀をつづった「霧笛」。タイム・トラベルがはらむ危険性を鋭く衝いた「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」など、SFの叙情詩人と呼ばれる巨匠の幻想と詩情にあふれる短篇集。ジョゼフ・ムニャーニによる幻想的なイラストも収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マーム
64
ブラッドベリの訃報に接し、久しぶりに手に取った短篇集。読むと全作品を通じて流れる詩的な雰囲気とペーソスの漂う作風に、嗚呼これがブラッドベリなんだという感慨にひたること頻り。読友さん推奨の「霧笛」はやはり面白く、「百万年の孤独」とでも改題したくなりました。また、「目に見えぬ少年」は、老婆の悪戯がやがて仲の良かった少年との悲しい別れへとつながっていくあたりのえも言われぬ寂寥感に心がしめつけられる思いがしました。また、各話の冒頭に挿入されているジョゼフ・ムニャーニの版画のようなイラストも雰囲気があって良かった。2012/06/28
KAZOO
11
ハードSFに対しブラッドベリの作品は本当に抒情性があります。幻想的な風景が醸し出されてこの作品集は好きなほうの一つです。この作品集は多分、サウンドオブサンダーが映画化されたときに新装版文庫として再出版されたものだと思います。映画はあまり印象に残らなかったのですが、原作はおもしろいと思いました。またそれぞれの作品の最初にイラストがあるのも印象に残ります。2013/08/28
amanon
6
本篇もさることながら、中島梓による解説が印象的。ブラッドベリってどうしてこうも独特なファン心理を読む者に生じさせるのか?と。これまで読んできた彼の短編集の感想は、ほぼどれも似たり寄ったり。詩情性、優しさ、残酷さが微妙に入り混じった独特の世界…これ以上のことが書けない自分のお粗末な文才が本当にもどかしい。例えば「山のあなたに」に見られる、人の心の機微について、もっとうまく語れることができたら…そして何より、他の作品集でも既に読んだ「歓迎と別離」。人との出会いと別れの本質をここまで見事に描いた作品は稀だろう。2018/11/23
夏子
5
ブラッドベリ短編集。古代の巨大生物が灯台の霧笛の音を仲間だと思って海底から現れる「霧笛」がロマンあってとても好き。2025/03/18
relaxopenenjoy
5
1953年刊行の短編集。レイ・ブラッドベリは、「たんぽぽのお酒」に続き2作目。なんというか、SFなんだろうけど、ノスタルジー。そして終末感。中でも「荒野」「ぬいとり」「黒白対抗戦」「サウンドオブサンダー」「草地」「ゴミ屋」「歓迎と別離」表題作、あたりが印象に。挿絵はジョゼフ・ムニャーニ とな。なお、表紙のティラノサウルスを見て、息子(5)は「きょうりゅうのほんだー」と嬉しそうでした。2023/04/12