内容説明
ペレストロイカによって改革の進むモスクワ。英国主催のフェアの会場に、ソ連の女性編集者カーチャが出版社社主バーリー・ブレアあての匿名原稿を持ちこんだ。なんとそこにはソ連の核ミサイルの欠陥が詳細に記述されていた。この驚くべき情報に接した英国情報部は、原稿の真贋と著者の正体を解明すべく、バーリーにモスクワ行きを依頼する。巨匠が民主化の進行するソ連の取材し、新境地を拓いたスパイ小説の新たな収穫。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
28
ジョン・ル・カレはスパイ小説の大家であるということだが、私にとっては初めての作品。背景として、ゴルバチョフによるペレストロイカ(再構築/立て直し)やグラスノスチ(情報公開)が進められているソ連の現実がある。ある日、ロシアで開催中のブックフェアに出店していたランダウのもとに、ロシア人の出版社に勤めるカーチャという女性から、ノート3冊がもちこまれる。パーリーという英国の出版者に届けてほしいという依頼付きで。そのノートには、どうもロシアの軍事関係の核心的な事柄が記載されているようなのだ。⇒2022/04/05
bapaksejahtera
15
ペレストロイカから3年目。モスクワで開催の英国フェアに女性が訪れ、ブースを設けたが欠席の英国の一出版社主宛への書類を、偶々隣のブースにいた出版セールスマンに託する。改革の時代乍ら生活は苦しく共産党の桎梏は各処に及ぶ。文書の内容は高度の科学知識を示す物で、彼はこれを秘匿して英国に帰る。出版社主は掴まらず、内容を慮った彼は諜報部局にこれを持込む。以降彼への聴取から、社主のロシア再派遣へと進み、小説には美しいその女性と共に、サハロフをモデルとする天才科学者の登場迄を描く。ル・カレの小説としては読み易い進行だ。 2022/07/07
kinka
9
ペレストロイカ時代のソ連とイギリスを舞台にしたスパイ小説。ソ連の科学者からミサイル技術の機密を託されたのは、交流事業でモスクワに伝手のある、英国の出版社の社長だった。彼は英国情報部に協力を要請されてソ連入りし、科学者との接触を図る。仲立ちに魅力的なロシア美人も出てきて、先はどうなるか、というところで上巻は終了。しぶしぶ即席スパイになる社長はじめ、人物の履歴をじっくり見せていくル・カレの筆致は相変わらず見事。この人のポスト冷戦ものもいずれ読みたい。一昨年公開の映画『誰よりも狙われた男』もいい映画だったし。2016/01/28
茉莉
4
「影の巡礼者」を読む前にこちらを先に読んでみました。ペレストロイカ体制下のソ連、英国主催のブック・フェアでカーチェと言う女性が英国の出版社社長バーリー宛に託した3冊ノート。それが、本人不在のため英国情報部『ロシアハウス』の手に渡ってしまった所から物語が始まります。主人公はバーリーですが、情報部法律顧問ポールフリの回想録です。具体的な感想は下巻の方で。2015/04/13
うめ
3
英国情報部員たちがバーリー探しに手こずるなど、バーリー宛の匿名原稿が彼の元に届くまでに、色々と騒動が起こるのですが、それが面白かったです。バーリーと美女カーチャが出会ったところで上巻はおわり。下巻を読むのが楽しみです。2019/12/17
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