内容説明
逆説の思想、飽くなき批判精神の射程。人間と社会における不変の真理とは何か。“現実”を見つめ直すとき、時代を超えて読み継がれてきた不朽の名著。
目次
1 本書以外のあらゆる物のための弁明
2 脳病院からの出発
3 思想の自殺
4 おとぎの国の倫理学
5 世界の旗
6 キリスト教の逆説
7 永遠の革命
8 正統のロマンス
9 権威と冒険
著者等紹介
チェスタトン,G.K.[チェスタトン,G.K.] [Chesterton,Gilbert Keith]
1874‐1936。イギリスの小説家、詩人、批評家、ジャーナリスト
安西徹雄[アンザイテツオ]
1933‐2008。松山市生まれ。上智大学大学院修了。同大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
29
兄にプレゼントした本。著者が唯物論者にふっかけられてキリスト教を必死に擁護する内容であるが、真の狂人とは、理性以外の何もかも失った人であるとか、信仰を有するなら道化になる覚悟を持たねばならないとか、人を正気たらしめているのは、人の理解しえない力を借りることとか、徹底な何かになることを一番危険視していて、読み返すごとに発見を得る本だと思う。自分の場合は徹底的な無神論や唯物論で理論武装せず、地元神道に則った伝統社会を大事にしていきたいし、他人には強要しないし、一生懸命楽しく幸せにやってこうと思った。 2025/03/18
マッピー
19
ここ数日苦戦していた本です。まず、なんの正統について書いている本なのか。それはキリスト教です。薄々わかっていたけどね。ブラウン神父シリーズの作者だから。でも、だから、硬質な文体の中に見え隠れする仄かなユーモア、みたいなものを期待していたのですが、そんなものは一切ありませんでした。文字を目で追っていっても全然内容が入ってきません。”狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆるものを失った人である。”なるほど。この辺までは何とかついていけたけど…。次の本を読みだすまでに、少し時間を要するかも。2022/10/02
ネムル
14
「狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である」キター!と思いながら、ついに読む。冒頭のヨット乗りの比喩から既に楽しいが、チェスタトンの小説にも増してわくわくさせられる本だ。保守主義の古典としてつとに有名だが平凡・平衡・中庸・謙虚・伝統への配慮とごく普通で当たり前の人間の振舞いを、ルイス・キャロルもかくやの語りで伝える。やはりチェスタトンはバカらしくも愛らしいな。そして日常のロマンスがたっぷりつまっている。2020/05/09
いとう・しんご singoito2
9
「フロイトかルイスか」きっかけ。ブラウン神父シリーズの著者による1908年刊行のキリスト教護教論。実際は当時の唯物論や発展史観、進化論、虚無主義などの攻撃から教会を守るための議論であり、それゆえ聖書釈義はほとんど出てこない。キリスト教にこと寄せて、ご自分の心情を主張しているんだけれど、当時の人気作家としての軽妙洒脱でテンポ感の良い文体に流されて、だんだんと理屈が破綻していく、という本。キリスト者としては、聖書との格闘まったく見られなくて、護教に名を借りた冒瀆、という印象でした。2023/05/10
無能なガラス屋
6
「自殺者が殉教者の正反対であることは誰の目にも明らかである。殉教者とは、自分以外の何物かをあまりに強く思う結果、自分一個の生命など忘れ去ってしまう人のことである。これにたいして自殺者は、自分以外の何物にもあまりに関心を持たぬ結果、もうこれ以上何も見たくないと思う人のことである。一方は何物かが始まることを望み、他方は何もかも終わることを望むのだ。」2023/02/07