感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
281
タイトルの「キャッチ=22」の意味は比較的早い段階で明らかになるが、それは漢文の「矛盾」の故事そのものであり、同時にまたその裏返しでもある。すなわち、どんな風にしても出撃することを免れないのだ。物語の時間軸は第2次大戦中のイタリア戦線。アメリカ空軍の爆撃部隊が描かれるのだが、たしかにジグソー・パズルの断片が散らばっているかのような一見してとりとめもない構成である。したがって、読者は戸惑いを隠せないだろう。そして、それこそがこの小説のたくらみなのだ。高射砲弾も死もいつどこから飛んでくるのかわからないのだ。2016/12/22
りつこ
25
どうにかよんたけど下巻に進む元気がでない…。むむむりかも。2017/08/18
おおた
20
P.100くらいまでは読みにくさに閉口するかもしれない。だが、そこを乗り切れば不条理と不謹慎と笑いの世界に囚われて身動きできなくなる。キャッチ-22の意味は調べればわかるとして、その具体例をこれでもかとぶつけてくるさまはコント大会の様相。理解不能堂々巡りな詰問、全裸で授賞式に臨むヨッサリアンをどう処していいか分からないお偉方、猫と正々堂々戦うハングリー・ジョー、そしてルチアナとのエペペな恋愛! 文学史上最高に不気味な茸も登場します。このディスコミュニケーションに笑って泣け! 諸君、これを読むまで死ぬなよ。2014/11/23
allite510@Lamb & Wool
9
これも勧める人が多い本。軽口と皮肉で埋め尽くされたよくあるアメリカ的マッチョな物語だなあ、4コマ漫画にしたらいいんじゃない?とか軽く構えていたら、着実に積み上げられた狂気の中で、ベタなギャグであっても笑うに笑えないという濃密な混乱状態にいつの間にか取り込まれている。その混乱の極みで唐突に出現するB=25操縦室内の狂騒的シーンは非常に映像的で、ペキンパーやジョン・ウー映画のスローモーションのように脳内再生され、美しいとすら思ってしまう。下巻が楽しみ。ワクワク。2017/09/15
人力飛行機
9
架空の戦争を描いた奇想小説。ヴォネガットのようなユーモア溢れる語り口だが、実際は黒い笑いに満ちている。それは例えば独特の逆説的な表現(AになりたいからAをしない等)にも表れていて、始めはニヤニヤしながら読み進めることができるのだが、(作品特有の)ばらばらに崩された時系列の断片が埋まるにつれ、様相は一変する。矛盾だらけの論法に整合性が生まれ、且つそれが一般常識から見れば依然矛盾に満ちていると気付いた時、笑いはひきつりに変わる。作者のイジのワルさに敬意を表して、逆説的にユーモア小説と呼びたくなる作品である。2013/09/30