出版社内容情報
食物も着る物もすべて村にあった。村人が全員ひっこしていっても、おじいさんとおばあさんは畑を耕し、次の世代のためにと、畑の石をひろい続けている。
その姿を、大銀杏の中でなくなったというお坊さん「安心」になぞらえ描く。
大西暢夫/著
小学校中学年から
内容説明
小さな村の大イチョウ。ダム建設にゆれた村で、変わらず、動かず、そこに暮らし、土を耕し続けた夫婦がいる。
著者等紹介
大西暢夫[オオニシノブオ]
1968年生まれ。写真家・映画監督の本橋成一氏に師事。1998年からフリーカメラマンとなる。25年間の東京での暮らしから、現在は生まれ育った岐阜県揖斐郡池田町に拠点を移す。2011年の東日本大震災の衝撃を忘れないために、東北へ支援物資を何度も運びながら取材を継続し、映像報告会を行いながら、映画『家族の軌跡 3・11の記憶から』を製作中。『おばあちゃんは木になった』(ポプラ社)で第8回日本絵本賞、『ぶたにく』(幻冬舎エデュケーション)で第58回産経児童出版文化賞大賞、第59回小学館児童出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ🍀
174
ここにはすべてがある。住み慣れた土地を去ることの辛さ。この大地で土になりたい。樹齢数百年の大きなイチョウとともに。…昭和30年から今も続くダム計画。世代を越えて振り回された五木村。それを見つめ続けた大樹と尾方さん。山仕事、畑仕事、川遊び、のんびりと穏やかな変わらぬ暮らしを続けられることの尊さ。…混沌の世界で、人は大切なことに気づき始める。価値観の変化。…私の故郷も時代とともに変わりつつあるが、幼少期の風景が今も広がっている。その素晴らしさに気づかされる。日本の原風景。愛着のある土地でいつかまた暮らしたい。2021/08/28
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
134
50年―――自然の地形が変わるのに要する時間なら珍しくないかもしれないが、一人の人間に与えられた時間に占める割合としては決して短くはない。昭和30年代に持ち上がったダム建設計画。生まれ育った集落が水の底に沈む。変わっていく故郷の風景。ご近所さんは皆去っていき、先祖から受け継いだ家を壊し、お墓を引っ越し、樹齢500年とも言われる大イチョウを移す準備をしていた時、突然ダムの計画が止まった。夫婦2人だけが取り残された。故郷の姿は元には帰らない。でも、ここで生きていく。淡々と生きる老夫婦の笑顔が眩しい写真絵本。2016/06/12
あすなろ
118
【育児】五木村の足場に囲まれた大銀杏が悲しげ。ここで土になる、という内容に対し、子供向けの課題図書指定なのだろうが、大人の僕は、それも当然感じるが、それよりも二転三転する政策に揺れる村や大銀杏に想いを寄せる大人の僕。ダムの水没のため、高架橋の建設のため、翻弄される人々や樹や生活とはなんなんだろう?岐阜の池田町に住むという著者の大西氏の写真と文章により考えさせられることは子供にも大人にも多くある作品だった。2016/08/07
kinkin
96
いい本だった。大きな銀杏の木と村に暮らす老夫婦。静かな時が写真から伝わってくる。生きる、暮らすとはどういうことなのかこの本を読んでますますわからなくなった。知ったかぶりで人生を論じたり不平不満を愚痴りながら暮らす自分にとってまったく別世界だ。そこに生まれてそこで死に土になる。日本もほんの100年位前はこんな生活は珍しくはなかったはずだ。あまりにも早すぎるほど成長し続けて今疲れた者にとってゆっくりと大きな木の下で暮らす生き方というものがあることを知った。図書館本2017/10/04
佳音
95
地理に疎いのでお恥ずかしいが、この大イチョウは熊本地震で無事だろうか。大イチョウを見守る、茂さんご夫婦は大地がお守りくださると信じたい。ダムが頓挫し、変わり果てた村に、変わらぬものを守ってやがて自分達もこの地の土になると淡々と暮らす老夫婦がいる。その生活は、楽しみよりも寂しさや悲しさ、老いの哀しさがあるに違いない。今を生きる。土になるとも。2016/05/25