感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
127
【奇妙な味海外読書会イベント】もしも美食家で健啖家たる悪魔がいたとしたら‐悪魔と明記されている訳ではないが、田舎町コブに現われた長身の男・コンラッド。町の創設者・コブ家の子孫として町を二分するヒル家とヴェイル家、そのヒル家の料理人として雇われた彼は、その膨大な料理知識と人間離れした腕前で、誰をも魅了する料理を提供していく。当初、その容貌を「飢えた黒い鷲」と町の人々に評されたコンラッド。彼の料理に魅せられた雇い主たるヒル家の夫妻と息子は、次第に彼自身に魅了され、嬉々として彼のために働くことに。次第に逆転→2014/04/29
セウテス
68
いったいどのジャンルに含まれるのか、作家さん自体も謎の多い人物であり、チョッと特別枠な作品。雇われた料理人が凄腕を披露し、少しずつ雇い主との立場が逆転して行く。料理を媒体に人が洗脳されていく恐怖、過ぎた食欲が何故に七つの大罪の一つなのかが、分かる様な気がする。薬物問題を思い描いてしまうが、最初は低価格で望んだ以上の快楽を与え、やがて離れられなくなると、高価格で与えた以上の大きな利益をかっさらって行く。後に残るものは、狂気の笑顔か自らの愚かさを悔いる涙か。それにしても料理人は何者なのか、複雑な怖さをどうぞ。2016/03/21
藤月はな(灯れ松明の火)
48
「食べられればそれでいい」という田舎町、コブの有力者、ヒル家のコックとなったハードボイルドな口調のコンラッド。彼は反対の効果を見せる料理で人々の胃だけではなく、心も捉え、自分を追い出そうとする粗暴な料理人の手に包丁を突き刺し、役立たずのメイドや執事、料理手伝い、家政婦をおっぽりだし、全てを掌中に治めていく。じわじわと料理で逆転していく階級制、人間関係が筒抜けになりそうな村が実は事態を把握していなかったという皮肉を描く。残念ながら料理のインパクトがなく、私はお腹がすきませんでした。そしてだれもいなくなった。2012/10/08
ざるこ
47
痩せぎすで黒鷲のような風貌のコンラッドがコブの町に現れヒル家にコックとして雇われる。ヒル家の人々は美味しい料理に胃袋をがっしり掴まれ、町の人々は言葉巧みに唆され脅されてコンラッドの手中に堕ちていく。料理に対しては常に真面目で完璧だけど時々冷酷非道。この謎の男、何がしたいんだろう?時折見上げるプロミネンス城に何かあるのか?料理でコンラッドに操られていく人々。ゾッとするのになんだか愉快。ラストのコンラッドには「その姿で満足かい?」と、ふふんと鼻で笑って問いたくなる。奇妙でシュールでとても「味」のある作品です。2019/02/19
とりあえず…
42
イギリス(と思しき)の片田舎にやってきた一流の腕とセンスを持つ料理人。冒頭から不穏な空気が漂う。彼によって知らず知らずに調教されていく雇い主一家や村の人々。気づいた時には…。 正気を保っていると思っているはずの人の心がじわじわと操られていく様子が怖いというより、むしろ小気味良い。第三者として見る読者は気づけても、果たして当事者となった時にはどうでしょう…。 とは言え、彼自身も最終的には本能に操られているにすぎないのだが。 食を制するものは強い。2014/06/24
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