出版社内容情報
女性だけの自爆テロ集団がチェチェンから日本に潜入した。特捜部による捜査の一方で、城木理事官は政治家の兄にある疑念を抱く。
内容説明
チェチェン紛争で家族を失った女性だけのテロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入した。公安部と合同で捜査に当たる特捜部は、未成年による自爆テロをも辞さぬこの敵の戦法に翻弄される。一方、城木理事官は実の兄・宗方亮太郎議員にある疑念を抱くが、それは政界と警察組織全体を揺るがす悪夢につながっていた―現代の悲劇と不条理を容赦なく描き尽くす、至高の大河警察小説シリーズ、憎悪と慈愛の第4弾。
著者等紹介
月村了衛[ツキムラリョウエ]
1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年に『機龍警察』で小説家デビュー。2012年に『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、2013年に『機龍警察 暗黒市場』(以上ハヤカワ文庫JA)で第34回吉川英治文学新人賞、2015年に『コルトM1851残月』(文春文庫)で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』(幻冬舎文庫)で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『欺す衆生』(新潮文庫)で第10回山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶち
89
機甲兵装という未来的な(架空)有人兵器を装備した日本警察という虚構の物語に、現実世界の世界情勢を絡ませて、今作も読み応えたっぷりです。今回はチェチェン紛争で家族を失った女性だけのテロ組織『黒い未亡人』が登場。同名の組織は実存し、チェチェンの民族紛争の背景に目を向けさせてくれます。その悲劇と不条理に震撼とさせられます。警察組織内の対抗勢力<敵>に、今作から霞ヶ関と永田町までもが絡んできて謀略と駆引きが目立ち始めてきました。これから、この攻防も激化していくのでしょう。楽しみではあります。2023/11/26
のり
70
チェチェンで家族を失った女達が結成したテロ組織の「黒い未亡人」。そんな彼女達が日本に牙を向けた。未成年者を自爆テロに仕立てる程に追い詰められた事情。龍機兵に搭乗する百戦錬磨の3人の警部達も未成年絡みで心を乱す。殺さずに鎮圧出来るのか?テロ阻止の他に、警察内の見えない敵も動き出す。搾取され続けた悲劇には心痛むが、方向性を間違えてしまった。だからこそ「カティア」には前を向いて生きていって欲しい。2023/11/06
sin
67
物語だからもちろん創作であるが、その芯には現実を併せ持っている。大国による小国の蹂躙、少数民族への迫害…権力者が、力を持つ者が弱者を搾取する。あるいは民主主義と言いながら数の暴力に無頓着になる。人間は哀しいかな尻尾のない猿に過ぎないのかと思わざるを得ない行為が世界中に満ちている。現在進行形で侵略戦争を継続するロシアが過去に行った他国の民族への弾圧が要因となり産み出されたテロリストが物語の核だ。国と云う明確な後ろ楯を持たない戦い、主義主張を貫く為に無辜の民を巻き込む泥沼の戦い、虐げられた者の叫びが谺する。2023/06/11
森オサム
46
機龍警察シリーズ四作目。由起谷主任と城木理事官のストーリーが一つの軸となった話。チェチェン紛争の知識が無く、この復讐に取りつかれた集団への感情移入は出来ませんでしたので、憎むべきテロリストとして読み進めました。名も無き警察官達の命は紙くずの様に吹き飛んでしまい、テロとの戦いは戦争なのだと思い知らされる。なので、そんな中描かれる城木理事官が余りにも甘すぎて、緩すぎて、嫌になった。由起谷主任も感傷的だが、立場の重要度が違いますから。やはり命がけの龍機兵搭乗員との落差は大きく、前作の緊張感は何処へ?、残念少々。2025/01/08
くたくた
46
強いて言うなら、城木兄が良い奴だったのでほっとしている。相似と言うにはあまりにも歪な様々な母と子の関係に加えて、兄弟の相剋まで抱え込むのは辛かった。今回もエンタメには重すぎる現実をぶち込んできた月村了衛。パレスチナの惨事をモニター越しとは言え目の当たりにしながらのこのストーリーだ。憎悪の連鎖をどこで止めたら良いのか、止められるのか。そうまでして子供を助けることの意味は?そんなことを考え続けてしまった。2023/11/18