出版社内容情報
香港法人の代表取締役として出向を命ぜられた、IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一を待ち受ける陥穽とは? 解説:北上次郎。
内容説明
IT企業Jプロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、帰国の途上、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして、痛切なる恋愛小説。
著者等紹介
早瀬耕[ハヤセコウ]
1967年東京生まれ。1992年、『グリフォンズ・ガーデン』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
664
まずはタイトルに魅かれて。次いでは表紙の写真にも。河畔に特徴的な塔が立っている、ここはどこだろうか(乞御教示)。物語の舞台は香港、澳門を起点にバンコク、サイゴン、東京となかなかにスケール感が大きい。内容的にも、日本離れのした本格的なハードボイルド小説だ。澳門で金正男が登場するのはご愛敬か。ただし一私企業が、自らの利益のために次々と殺人を犯すのを辞さないというのは、いささかリアリティに欠け、その分、小説世界に距離を置いてしまいかねない。一方、小説の全体を貫流するのが「忍ぶ恋」というのは、まことに哀切の極み。2020/03/07
そる
338
序盤ハイクラスな生活スタイルでなじめないし退屈、と思ってたら急展開して一気読み。壮絶すぎる。シェイクスピア四大悲劇「マクベス」のストーリー的運命に皆抗えない。だからこそ大企業の闇、殺人、恋愛、友情など要素詰め込みすぎなこの話も納得。悲しい話だけど初恋の純愛が美しかった。ちょっとややこしすぎたけど。少し回りくどい表現の文章だが知的。めちゃおもしろかった!「本当は、もっと、中井に手紙を書いていたかった。たとえ、届かない方がいい手紙でも、書くっていうことは、中井のそばに行けるようで、心が落ち着ける時間でした。」2022/04/28
のいじぃ
330
読了。企業の闇と「マクベス」に囚われた人たちの物語。ラジオの『JET STREAM』が似合いそうな雰囲気で滑り出し、東アジアで日常から非日常へと堕ちていくスリル感は良いものでした。ただ、「アペンディクス」といった言葉の用途にピンと来ない、全てを理解できないのは相変わらずで、自身の経験と知識のなさも手伝って消化しきれないのは残念。主人公も今風で言えば、やれやれ系。周りがお膳立てしてくれるため、ハードボイルドとはまた違った印象。男女の会話なども前2冊と同じスタンス。共通/航空/詐欺師/教訓/信じたいものが真実2019/04/26
まーくん
258
スターフェリーだ!香港島の高層ビルを背景に九龍サイドに停泊中の丸みを帯びた船体。平積みされた文庫のカバーに惹きつけられ手に取った。高校入学の日、顔を合わせた男二人女一人の同級生。卒業後、それぞれの道を進んでいったはずの三人が運命に導かれるように香港へ、そして大きな事件に関わっていく。初恋のほのかな想いを秘めたまま、あたかも悲劇マクベスのシナリオをなぞるように・・。遠い日の独身時代、帰国休暇への途中、ひとり立ち寄り歩き回った香港の雑踏が懐かしく思い出された。まだ啓徳空港や九龍城の存在した英領香港であったが。2018/04/23
Kajitt22
176
丁度ネット銀行系のカードを取得し、急な航空券をスマホで取得したり、色々なネット決済や資金移動の便利さに感心していたところだったので、興味深く一気に読めた。戯曲『マクベス』と高校時代のプラトニックラブを通奏低音にした、ネット社会の闇を描いたハードボイルドミステリー。『深夜特急』のマカオのカジノから一気に裏社会を旅したよう。停電で遠くから街の灯りが消えていき、暗い森が動き迫ってくるラストが秀逸。ここ数年の小説の中では出色の作品だと思う。2019/05/06
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