内容説明
体内の臓器崩壊現象が頻発する未来社会。かつて人工臓器市場を独占していた巨大メーカー・ライトジーン社なき今、臓器をめぐる奇怪な現象や犯罪が続発していた。都会の片隅で自由に暮らし、本とウィスキーを愛する菊月虹は、ライトジーン社が遺した人造人間。虹は市警の新米刑事・タイスと共に臓器犯罪を次々と解決するが、やがて虹と彼の兄・MJの出生の秘密に関わる陰謀が彼を襲う。傑作ハードボイルドSFの決定版。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞(以上、早川書房刊)。1995年、『言壷』で第16回日本SF大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
31
人は歳を取れば必ず、臓器崩壊をするようになった未来。ライトジーン社によって超能力を付加され、生み出されながらも切り捨てられた菊月虹と自ら、切り捨てたMJのハードボイルド・ミステリー。個人的には「イグザンストの骨」が一番、印象に残りました。私は、自分で責任を負わないで逃げようとする死にたがりは大嫌いです。しかし、「何も残すことのないという事実」=「自己の否定という絶望」によって得られる不毛な不死性に対し、無情を受け止めることで「死」=「無にならず、生き続けられる救い」を得られるという逆説は仏教的でもある。2015/03/06
ソラ
24
面白かった。申大為の立ち位置が意外だった。どこかで主人公たちと対立する相手だと思ってたけど…2015/08/30
bowmorelover
13
久しぶりに600ページ以上の小説を読んで、疲れたけど疲れに負けないぐらい面白かった。設定は奈須きのこ先生の「DDD」に似てる。しかしそこは神林先生、SF的で哲学的。あまりハードボイルドとは感じなかった。2012/02/18
ヒロユキ
11
「本はうるさくなくていい。」…本と酒を愛する人造人間が主人公。大半の人間が人工臓器の移植を受けて生き永らえている未来都市を舞台に描かれるハードボイルドSF。フムン…設定や世界観は好きなのに、なぜかあまり楽しめなかった…まあ、そういうときもあるさ。2013/05/29
イツキ
9
人工臓器を製造する企業と、超能力を使える人造人間、そして普通の人々が織り成す事件を描く連作短編集。どの短編も読みやすくて面白いです。同じ超能力者、そして同じように人工の臓器を受け入れた人間でもその人によって全く違う生き方や価値観を持っている様がリアルでした。ウイスキーが好きな主人公の酒の飲み方もなかなか興味深かったです、あとがきで書かれていた作者がダース単位で購入したという銘柄も気になります。2019/10/12