出版社内容情報
全面戦争後、荒廃した地球を舞台に描く表題作ほか、戦争テーマSFの傑作全8篇を収録
内容説明
米ソの全面戦争により地球全土は荒廃、わずかに残るのは戦い続ける両軍の兵士だけとなった世界。米軍が投入した“新兵器”によって戦局は大きな転換点を迎えていた…。「スクリーマーズ」のタイトルで映画化されたディック短篇中屈指の傑作である表題作、特殊能力を持った黄金の青年を描く「ゴールデン・マン」(映画化名「NEXT―ネクスト―」)、本邦初訳短篇「戦利船」ほか、戦争をテーマにした全9篇を収録する傑作選。
著者等紹介
大森望[オオモリノゾミ]
1961年生、京都大学文学部卒、翻訳家・書評家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shintaro
70
ディックの混沌とした頭の中を垣間見たようで面白かった。現実と虚構が反転、あるいは混沌とし、ディストピア的オチがある。本作は9編の短編集であるが、核戦争、宇宙戦争あるいは永久戦争というテーマがあり、緩やかなつながりがある。「ジョンの世界」や「変種第二号」には後の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」や作者が違うけどターミネーターの原型的思考が感じられる。当然若いうちに読んでおくべき本だった。この年になってディックが面白いとはヤバイが、未読のヲヤジはこっそり読んだほうが良い。知的な若者と会話したいのなら。2017/05/06
絹恵
47
"人間はどんなものにでも安全装置をつけてきた"と言って、"同士討ちを避けるための安全装置"を搭載するものは、自らは自らを裁けないことで結果的に危険が生まれます。しかし自ら作ったものを自ら壊すものを作るということは、ある意味では自制と責任を果たしていると言えるし、またある意味では壊し合いの水掛け論だとも言えます。神は自分に似せて人を作ったのなら、やはり人間が作る機械は人間に似て、末恐ろしいです。(PSYCHO-PASS/泉宮寺の生きがい『人間狩り』/改題『変種第二号』)2016/07/26
たー
22
秀作ぞろいの短編集。ディックらしく(?)だいたいオチは暗いけど。2014/08/17
もち
17
「それが変種第三号。いちばん効果的なやつだ」◆機械仕掛けの殺戮兵器により、決着したかに見えた戦争。和平交渉に出向いた将校は、思わぬ新兵器と遭遇する。生存を賭け、仲間と行動を共にするが――。疑念と、銃と、爆炎を向け合い、戦いは続く。(表題作)■本好きなら、オチを読める短編もあるかもしれない。現在の作品群にまで原型を見いだせるほど、面白さの根源をがっしり掴んでいるからだ。70年前から時を超えて届く、色褪せぬ驚き、戦慄、カタルシス。2020/01/28
楽
16
14年、主に戦争を扱った短篇集だがやや長めの作品もあり。ほぼ1950年代の作品で冷戦の影響を強く受け、人間対人間、人間対機械の戦争、戦争後の荒廃した世界が描かれる。平和な家庭が核戦争の世界に放り込まれる、最初の「たそがれの朝食」から唸らされる。中盤以降の「火星潜入」「歴戦の勇士」「奉仕するもの」「ジョンの世界」と秀作ぞろい。表題作の「変種第二号」はのちに「スクリーマーズ」として映画化されたが、誰が人間なのか、疑念が疑念を呼ぶ展開で、アイデンティティを問うテーマの多いディックの作品の中でも出色。2019/11/17