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内容説明
戦争の傷痕が生々しく残るロンドン。戦争未亡人のメグは再婚を控えていた。ところが、そんなメグのもとへ送りつけられた数枚の写真は、亡夫の生存を示唆したものだった。単なるいたずらか、何か狙いがあるのか、あるいは本当に夫が生きのびているのか?動揺したメグは名探偵アルバート・キャンピオン氏とロンドン警視庁のルーク主任警部に相談する。写真の送り主の指示により駅に赴いたメグの前に現われたのは…姿なき敵を追い、霧のロンドンに展開される一大マンハント。キーティング、シモンズら斯界の達人が絶讃した、黄金時代の傑作。
著者等紹介
山本俊子[ヤマモトトシコ]
東京都立第十高等女子学校卒。英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
61
戦死したはずの夫と思われる人物の写真が5年たったのちに未亡人のもとに送られてきたのはなぜ?深い霧に覆われ見透しがまったく利かないロンドンを舞台としたミステリ。ロンドンは、いまだ戦後の混乱状態が続き、不穏な雰囲気に包まれている。戦争から切り離した新しい生活に目を向ける者たちがいる中で戦争を引きずったままの者たちもいて、霧と闇に紛れて不穏な動きをする彼らを虎にたとえている。戦勝国でも戦後が明るいとは限らない。リアルなロンドンの暗さがなんとも不気味だ。2023/05/19
紅はこべ
14
キャンピオンも既に一児の父。おっさんだ。キャンピオンの従妹で戦争未亡人のメグが再婚発表した矢先、戦死した筈の夫が写った写真が送られて来る。果たして夫は生きているのか?キャンピオンはあまり活躍せず、登場する意味がない。サスペンス系犯罪小説。2008/06/01
ノベツ
11
めっちゃ怖い一冊。主人公たちやキャンピオン一家が殺人鬼とニアミスしまくり。怖すぎてちょくちょくページをめくる手が止まってしまった。謎解きではなく善VS悪。鳥肌モノの傑作! 長文感想⬇ https://note.com/nobetsu/n/n79b7fef91017 2020/10/10
八百蔵
4
ピカレスク小説。絶対的悪に相対するのは老牧師とその娘である戦争未亡人。この人が聖母役。死んだはずの夫らしき写真が送り付けられるという魅惑的キャッチから始まり、隠された秘宝を追いかける両者…。話の骨格をなす人間関係が偶然に過ぎるのが欠点。内装や衣装の美しさを語るかなり細やかな記述が、(今は使ってはいけないコトバだろうが)女性の手らしく、話に真実味を与えている。2024/02/26
uchiyama
2
最初は、描写が通俗的だったり的外れだったりで、ちょっとまだるっこしいなと思いながら読んでいたのですが、主任警部の、感情ではなく、事物をそのまま示す奇妙な手振りの癖に慣れてくる頃には、これは舐めてはいけない小説かもな、という気になってきました。特に、クライマックスといえる司祭との対話、その心理や葛藤など、面白かったです。年齢、階層、思考、それぞれに違った人々が描かれていて、ステレオタイプなとこもあるかもしれませんが、人が、そういった自身や社会やの枠に嵌められているものだ、ということも含めて。2023/11/20