出版社内容情報
教皇と皇帝はどちらが偉いのか。聖職叙任権をめぐる争いは対立の序曲にすぎなかった。
世界の今を解くカギは、すべて歴史の中にある――。誰もが一度は耳にしたことがある「歴史的事件」と、誰もが疑問を抱く一つの「問い」を軸に、各国史の第一人者が過去と現在をつないで未来を見通す新シリーズの第3弾! 1077年1月、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世がローマ教皇グレゴリウス7世に対して、裸足のまま雪の中で3日間赦しを請うたという「カノッサの屈辱」。なぜ皇帝が教皇に屈服したのか? そしてそもそも皇帝と教皇は何が違って、なぜ教皇のほうが偉いとされたのか? ローマ・カトリック教会の成立から、十字軍遠征、教会分裂、新教勃興までを通観し、単に叙任権闘争の一事件とされがちな「屈辱」の歴史的意義を考える。
第1章 なぜ皇帝ハインリヒ四世は、教皇グレゴリウス七世に屈したのか
第2章 「ローマ」と「教皇」はいかにして結びついたのか
第3章 そして十字軍が起こり、教皇の権威は確立した
第4章 プロテスタント勃興、宗教改革への道
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
107
カノッサの屈辱とは、ハインリヒ4世が裸足のまま断食と祈りを続け、教皇グレゴリウス7世に破門の解除と赦免を認めてもらった事件と思っていた。ところが、両者の抗争は、その後40年も続き、結局、ハインリヒがローマを占拠して教皇を退去させ、自ら擁立した対立教皇から神聖ローマ皇帝を戴冠したという結末だったとは…。一体、自分は、「世界史」で何を勉強していたのかと情けなくなる。ローマ教会の成立、神聖ローマ帝国の成立、グレゴリウス改革、十字軍、ヴォルムス協約、宗教改革など、教皇を巡る歴史の糸が見事に紡がれたいい本だと思う。2024/09/22
サアベドラ
33
有名なカノッサの屈辱を枕に、中世初期~盛期における教皇権の隆盛とその後を様々なトピックで描くリブレット。2023年刊。著者の専門は教皇庁史。浅く広くではあるが、教科書レベルでは捉えにくい中世のローマ教皇の動静と、特に中世史の一大イベントである十字軍への関与を手堅くまとめており、教皇史を知りたい人にとってはいい導入になると思う。各トピックの記述は短めなのでより詳しく知りたい人は巻末の参考資料を参照することになるが、参考文献リストは残念ながら世界史リブレットの方が充実している。2024/03/10
kei-zu
26
深夜番組のタイトルとして記憶がある「カノッサの屈辱」。大げさな命名に比して、世界史的な説明がピンと来なかったのは事実。本書は、同事件から「教皇」について、また十字軍などの歴史的背景を解説する。神聖ローマ帝国って、ローマじゃないし、なぜ「神聖」なのかわからなかったのですが、いろいろあるのねぇ。ドイツでは対外的に自国の姿勢を説明する際、「カノッサの屈辱」の語が使用されることが、なおあるとのこと。欧州史って、おもしろい。2024/07/06
鯖
19
「教皇は、諸皇帝を廃位することができる」カノッサの屈辱の当事者グレゴリウス七世が定めた法文書ディクタトゥスパパエの12条なんだそうである。カノッサの屈辱といえば、例のテレビ番組を思い出す世代なんですが、あれ面白かったね。教皇はまだ十字軍の終了宣言を公的には出してないとか、単独相続が当たり前の中世ヨーロッパにおいて、貴族の次男坊以下にとって東方の富を簒奪できる社会政策の一面としての十字軍とか面白かったなあ…。征韓論みたいなモンだよね要は。毎度言ってるけど、このシリーズだいすき。もっとずっと続いてほしい。2024/06/19
MUNEKAZ
17
山川の世界史リブレット拡張版みたいな印象かな。「カノッサの屈辱」をとっかかりに、ローマ教皇の権威や教会改革の流れ、十字軍、宗教改革と中世キリスト教の一通りが手軽に学べる一冊になっている。聖界に君臨する権威だけではなく、「ローマ教皇庁」という確固とした行政機関を持ち、法の専門家集団を抱えられたことが、ローマ教皇に今日までの影響力を与えた秘訣なのかも。大学教授の上手な教養講座を聞いている感じで、さくさく読めて面白い。2023/12/27