感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
112
安吾の言うことは、いくら読んでも私には理解できない。文章の一つ一つがきれいで、惹き込まれて読むも、俯瞰して考えた時に、芯となるものが根本的に私の持つものと違うようなのだ。彼の友であった太宰や織田作之助の書くものに対するような共感がまるで持てない。それでも理解したいから、また読む。そうやって「堕落論」や「青鬼の褌を洗う女」を何度読んだことか。この番組で何かわかるかと思ったら、やはり無理なようだ。自然に堕ちていった太宰と違い、頑丈な安吾は堕ちることに憧れ堕ちていった…、そういう気がする。2016/07/16
nbhd
22
ぼくがいま親鸞さんに浸かっているのは、間違いなくこの番組の影響(4月は歎異抄)なのだけど、今月もわりかしよおく見ている。やっぱり坂口安吾は良い。この本の中で気になったのは、安吾が戦中に日本映画社に嘱託で働いていたという事実。そこでは「年とった農夫の土に親しんだ手や、大切に着つづけられるツギハギの着物などを『忍苦と耐乏の魂』の象徴として映すという企画が大いに盛り上がった」らしい。これなんかは、一般的に批判されているマスコミの演出に近くて、そういったウソッパチへの反動から堕落論が生まれたのかもなどと思った。2016/07/19
しょうじ@創作「熾火」執筆中。
20
【1回目】「堕落論」だけではなく、「続堕落論」「日本文化私観」と、安吾の後継者的存在としての岡本太郎について言及している。制度と、制度と化した静的な日本文化とを徹底的に批判し、人間が本来的に有している荒々しい生命力の奔流に身を任せよと説くという。ある意味、元気が出る内容だった。2021/04/03
肉尊
16
偉大なる落伍者、坂口安吾といえば太宰治とともに無頼派と呼ばれる反道徳的な作風で活躍した作家だ。ドラッグ中毒、往来にて全裸で仁王立ち、100人前のライスカレー注文など、やることなすこと考えることぶっ飛んでるなぁと思っていたが、それは両親との関係にあったようだ。他人行儀な父、安吾に怒りをぶつけ続けた母、9歳の頃、家族を殺したい衝動にかられた安吾。包丁を振り上げるも「あの女だけは・・憎々しげに突っ立っていた」大人になって母子は和解し合うんだからこれもすごい。愛憎みちた屈折的な人生が彼の思想に影響しているようだ。2021/11/02
スミノフ
14
「堕落」という言葉が持つ一般的なイメージと、坂口安吾が展開した「堕落」との決定的な違いを学ぶことができました。新潟県民は「坂口安吾」の名前を聞く機会は多いですが、私を含めて、彼の真髄を理解している人は少ないはず。その意味で、安吾の真髄を噛み砕いて教えてくれる本書は有難い存在でした。さあ、原著を読もう。2020/09/10
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