出版社内容情報
コミュニズムが不可能だなんて誰が言った?
『資本論』は誰もがその存在を知りながら、難解・長大なためにほとんど誰もが読み通せない。この状況を打破するのが斎藤幸平――新しい『資本論』解釈で世界を驚かせ、『人新世の「資本論」』で日本の読者を得た――、話題の俊英だ。マルクスの手稿研究で見出した「物質代謝」という観点から、世界史的な名著『資本論』のエッセンスを、その現代的な意義とともにていねいに解説する。大好評だった『NHK100分de名著 カール・マルクス『資本論』』に大量加筆し、新・マルクス=エンゲルス全集(MEGA)の編集経験を踏まえて、“資本主義後”のユートピアの構想者としてマルクスを描き出す。最新の解説書にして究極の『資本論』入門書!
内容説明
はじめて『資本論』を開いた人は、あまりにその文章が硬いため、マルクスの真意を読み取れない―。この状況を一変させるのが本書だ。鋭いマルクス解釈で世界を驚かせた俊英が、手稿研究で見出した「物質代謝」の観点から『資本論』のエッセンスを丁寧に解説。さらに、ソ連や中国とも異なる「脱成長コミュニズム」の未来像までを見通す。初学者にもスラスラ読み進められる究極の入門書!
目次
第1章 「商品」に振り回される私たち
第2章 なぜ過労死はなくならないのか
第3章 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む
第4章 緑の資本主義というおとぎ話
第5章 グッバイ・レーニン!
第6章 コミュニズムが不可能だなんて誰が言った?
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
175
生活は便利になったが仕事は苦痛と化し、ウクライナ戦争に象徴される国益第一主義を掲げる強権政治が大手を振るなど資本主義の欠陥が露呈してきた。そうした政治の暴走を止める理論的根拠としてマルクスを再解釈し、ソ連型社会主義の欠陥を排した「市民営化」など人権と環境を優先する社会主義を提唱する。理想的で結構な話だが、その実行手段が全く書かれていない。人は良識と節度ではなく、個人の物欲と金欲と権力欲を優先する。著者の主張する方向へ世界が進んでも、利益を私有したり支配を図る者は必ず出る。結局そこで挫折するのは明白なのだ。2023/02/11
KAZOO
138
この方の「人新世の「資本論」」を読んだときにも感じたのですが、説明の仕方がうまくわかりやすいように書かれています。今回も現実の経済の状況をうまく資本論と絡めて説明してくれているので納得する気がします。ご自分が留学していたドイツの事情なども絡めて説明されていたりするのもわかりやすさがあります。ただ経済理論での説明ということではないのでそこが若干不満の残るところでした。2023/07/19
trazom
133
近年は、マルクスを、史的唯物論による革命のアジテーターとして読むのではなく、資本主義の限界(独占資本の巨大化と階級分化の極限化。それによる窮乏、抑圧、隷従、堕落、搾取の亢進)を説明する経済分析として捉えるのが傾向らしい。確かに、資本家による囲い込みと余剰価値の搾取による実質的包摂が、労働者の「魂の包摂」にまで及んでいる現状を、150年前に予言したマルクスの慧眼には畏れ入る。この状況を打破するのは、脱成長コミュニズムとコモンの再生だとして、ミュニシパリズムが例示されているが、どこまで有効なのか…。2023/07/08
mukimi
125
資本論の100分de名著の加筆版。本の解説に筆者の読みやすい解釈が加えられる。資本論はかなり難しいことで有名だがそもそも富や価値や資本などの語彙の定義が普段使用しているものと違うから到底理解困難だったことを知る。賃金の決め方、過酷な労働へ誘導される労働者、資本による支配の強化など、(理想を持ち戦っていると信じ込んだ)ワーカホリックな一労働者である自分の資本主義に絡まった人生を見つめ直したくなる。成長至上主義から離脱した素朴で平等な社会は筆者の言う様に実現するのか、社会の動きに注目したい。視野が広がった。2024/01/23
アキ
123
NHK100分de名著のテキストに加筆。1991年ソ連崩壊後、グローバル資本主義が唯一のシステムとなり、その弊害が地球環境の荒廃と劣悪な労働環境を来たし、資本家も自動化された資本の価値増殖運動の歯車でしかないと論じる。6章でマルクスが思い描いていた社会像を夢想する。それは共同体を元に脱成長型経済を目指すこと。民営化でなく市民営化であり、ラワースのドーナツ経済という考え方。ローカルなコミュニティや地方自治体が、新自由主義やグローバル資本主義に対抗してつながることが、マルクスのいうユートピアなのかもしれない。2023/03/14