内容説明
確率の発想さえ身につければ、不確実な状況をうまくコントロールできる。ギャンブルや保険、資産運用など、日常に即しながら確率の基本的な計算方法を数字の苦手な人にもわかりやすく解説し、経済学や金融工学などが確率をいかに利用しているかを紹介。さらに、環境問題などのリスクに確率のテクニックを応用して対処する可能性をさぐる。社会生活に役立つ、異色の数学入門。
目次
1 日常の確率(確率は何の役に立つのか;推測のテクニック―フィッシャーからベイズまで;リスクの商い;環境のリスクと生命の期待値)
2 確率を社会に活かす(フランク・ナイトの暗闇―足して1にならない確率論;ぼくがそれを知っていると、君は知らない―コモン・ノレッジと集団的不可知性;無知のヴェール―ロールズの思想とナイトの不確実性;経験から学び、経験にだまされる―帰納的意思決定)
そうであったかもしれない世界―過去に向けて放つ確率論
著者等紹介
小島寛之[コジマヒロユキ]
1958年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。同大学院経済学研究科博士課程修了。現在、帝京大学経済学部環境ビジネス学科専任講師。数学エッセイスト。日本ペンクラブ会員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やっち@カープ女子
29
私的にはギャンブルとかだけど、環境問題や社会制度の構築の等スケールの大きい問題に統計学的な考え方が如何に大切かが良くわかる一冊。ものの見方が変わるし、迷った時は統計学や確率論を役に立てようと思う。2016/03/19
KAZOO
9
表題からすると、比較的読みやすいと感じられますが、内容は結構水準の高いものだと感じます。ベイズ統計についても説明されたり、ナイトやロールズの理論についても説明されています。かなり歯ごたえのある本でした。2014/04/10
任世官(イエン・シーカン)
9
★おすすめ★ 詳しい書評はブログにて http://yenshikwan.hatenablog.com/entry/2013/09/04/123715 著者は数理経済学者であり、20世紀後半から注目されはじめたベイズ推定の概要について平易な説明をしたのち、我々の生活に深く密接している経済学にどのような応用がされているか、また応用することで、どのようなメリットがあるか論じています。その上で、最終章で著者の興味対象「論理的選考」について簡単な実例を示しながら、その有用性を説くに至っています。 2013/09/04
俊介
7
確率に関しての技術的な話だけの本なのかと思ってたら、いい意味で裏切られた。もちろん技術的な話も出てくる。その辺は結構難しく、半分も理解できたかどうか…。でも、そこが理解できなくても、読む価値はあったと思う。著者の観点はもっと幅広く、より良い社会を実現させるために、確率的あるいは数学的発想が何か役に立たないか、それを追求する為の本だった。ロールズの正義論、宇沢弘文の自動車の社会的費用にまで言及するあたり、そして、「変えられない過去」に対しての確率的最適化を図ろうとする著者のその着眼点に、はっとさせられた。2019/09/07
ちあき
5
不確実性を扱う科学としての経済学、またそのツールとなる確率論についての啓蒙書。高度な内容をかみくだいて解説する――しかも「わかりやすい比喩でわかった気にさせる」のでなく読者自身が理解していけるよう導く――小島さんの技は今回もさえている。加えてすごいのが視野におさめられている領域の広さ(生命倫理から社会哲学にまで踏みこんでいる)。もくじをみて驚く人も多いと思う。もう一つ、著者のあとがきはどれも学問への情熱が伝わってくる文章だけど、この本のあとがきは最高に感動的。ここだけでも読む価値あり。2009/11/29