出版社内容情報
20世紀イギリスの思想家,ハロルド・ラスキとは何者なのか.本書は,多元的国家論者,あるいは国際的に活躍した政治家という従来の見方を超え,「公共的知識人」としての彼の著作と思想を統一的に読み解く試みである.個人の自由と自律が実現される社会を追求したラスキが現代に残した遺産を探る意欲作.
目次
序章 ラスキとは誰か
第1章 公共的知識人としてのラスキ
第2章 初期三部作と歴史研究
第3章 『政治学大綱』と多元的社会主義
第4章 ファシズムと共産主義
第5章 ニューディールと「政治の自律性」
第6章 第二次世界大戦と同意革命
第7章 冷戦対立への悲観
終章 持続するラスキ
著者等紹介
大井赤亥[オオイアカイ]
1980年東京都生まれ、広島市育ち。2008年東京大学法学部卒業。2014年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学、法政大学、昭和女子大学非常勤講師、博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぽん教授(非実在系)
1
「英国の議会主義と自由主義の伝統を引き継ぎ多元的国家論を唱えたもソ連に甘くなり空回りした」政治家・政治学者ハロルド・ラスキの謎を丁寧に読み解いていく本。ラスキは確かにソ連には甘くなったが、他の甘い論者(ウェッブ夫妻ら)と異なり社会権のために効率的な独裁を許すというものではなく、ソ連が自由主義を掲げていたという、(甘い判断ではあるが)確かに自由主義の延長からくるものであったことを示す。但し、自由を以てしても結局総力戦体制や独裁に手を貸してしまう大河内一男や蝋山政道の例にラスキも堕ちかけたのではとも感じた。2021/08/11