内容説明
自分を語るのがうまいヤツにろくなもんはいねえ―どこか暗い陰を纏う男の呟きに惹かれ、加倉啓輔は彼と共にバッタ屋稼業に手を染めた。小さな水産取引の会社を興した二人の元に、金の臭いを嗅ぎつけたクセ者たちが群がり始める。リベート絡みの裏取引、倉荷証券の偽造、掴まされた再冷凍品。海千山千の連中を相手どっての取引は、騙されるヤツが負け―食うか食われるか、命懸けのコンゲームだ。友人さえも信用できない己の目と頭だけが頼りの危険なゲームに、次第に魅せられていく啓輔。しかし、順調に回りだした商売の足元には、思いもよらぬ陥穽が―。虚業を巡る痛快なゲームの幕が今、上がる。