出版社内容情報
弟はあの病室のあのベッドの上で、完璧に優しかった――
死にゆく弟との日々を描く表題作、デビュー短篇「揚羽蝶が壊れる時」、「冷めない紅茶」、「ダイヴィング・プール」。
芥川賞受賞へと向かう最初期の四作品と、自作を振り返る著者最新エッセイを収録。
揺らぐことのない美をたたえた、小川洋子の出発点。
内容説明
病に冒された弟と姉との時間を描く表題作、海燕新人文学賞受賞のデビュー作「揚羽蝶が壊れる時」、第二作品集収録の「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」。みずみずしい輝きを放ち、作家小川洋子の出現を告げる最初期の四篇。著者あとがきを新たに加え、カバーデザインをリニューアルした新装版。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年、『博士の愛した数式』で読売文学賞および本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、06年、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、13年、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、20年、『小箱』で野間文芸賞を受賞。21年、菊池寛賞受賞、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
68
これは!濃密な、あまりにも濃密な作品集。洋子さんの初期作品がこんなに有機的で、官能的だったとは!2023/05/18
優希
49
静かな調べを奏でているような短編集だと思いました。冷ややかな空気感が瑞々しさをも感じさせます。古傷の片鱗に触れているようでも心地良い不思議さがありました。2024/01/07
おっしー
46
デビュー作を含む4編の短編集。どことなく「死」の雰囲気を漂わせながらも、パキッとしてる感じがあった。変にダウナーな感じにならずに、人の生死を抱えながら共に生きていくみたいな。「冷めない紅茶」がかなり良かった。何か特別な背景とか境遇があるわけではないんだけど、だからこそ持たざる者の屈折した心の動きが伝わってきた。主人公が同級生夫婦に覚えていた憧れの純度が高いこと。ガツンと特別なを見せつけられたわけじゃない。だけど、普段から満ちた生活を送ってるんだろうなって想像できる。この夫婦の描き方が淑やかで好きだった。2023/06/10
まさ
29
小川洋子さんに感じる真っ白の世界。死にもつながり、生は異物ですら思ってしまう。読むごとに、限られた空間に広がる白色は透明感を増し、広がっていく。その中で、自分の世界が自分なりに重ねられ増えていくから、魅力的なのだろうな。2023/04/30
メリー
29
完璧な病室、他短編 主人公の心模様、何とも複雑で読み進めるのがもどかしい。どの短編も、私小説を読んでいる様な気がして、心情は理解し難い。2023/03/27
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- 和書
- 肝っ玉かあさん 文春文庫