出版社内容情報
夏目漱石の作品を江戸の文学――読本、歌舞伎、人形浄瑠璃と欧米文学との交点に生まれたものと捉え、比較文学の手法を用いてその関係性をひもとく。文庫化にあたってコラムや正宗白鳥の「夏目漱石論」を附録として収載した。
小谷野 敦[コヤノアツシ]
著・文・その他
内容説明
夏目漱石の作品を江戸の文学―読本、歌舞伎や人形浄瑠璃と、欧米文学との交点に生まれたものと捉え、比較文学の手法を用いてその関係性をひもとく。文庫化にあたり書き下ろしのコラムや、参考資料として正宗白鳥の『夏目漱石論』を付録として収載した。
目次
第1章 『坊つちやん』の系譜学―江戸っ子・公平・維新
第2章 「お家騒動もの」としての『虞美人草』
第3章 女性嫌悪のなかの「恋愛」―『三四郎』
第4章 「メタ=恋愛小説」としての『それから』
第5章 惚れる女、惚れられる男―『行人』
第6章 『こゝろ』は「同性愛小説」か?
第7章 幻の「内発性」―『明暗』
著者等紹介
小谷野敦[コヤノアツシ]
1962年(昭和37)茨城県生まれ、埼玉県育ち。東京大学文学部英文科卒業、同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士(比較文学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。2002年、『聖母のいない国』でサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shinano
18
ふむ。江戸文芸が漱石先生にしみこんでいるのがわかる著書ではある。やや、著者の文学文芸への持論確立のための漱石先生を“出汁”に筆致する面もみえるような気もしますが。 第五、六章は、著者らしい(著者の好きなメス入れ)だと思いました。過去にちょっとだけ著者の物を読んでまして。 特に 第六章は、読んでいくと、著者と上野千鶴子女史との論争が思い出される。男女恋愛を時代風潮からの観点の差とジェンダーの時代推移の認識論なのだが、ね。2019/06/19
Sosseki
0
「江戸から」というより、「男と女」という観点から作品を論じているようで、期待外れだった。「三四郎」、「それから」は確かに、男女間の物語ではあるので、なるほどと思いながら読んだし、明暗の吉川夫人と津田ができていたというのは面白い説だったが。維新直前に生まれ、漢文学好きの漱石が英国留学を英文学学者となり、日本文学の作家になった。漱石の作品は他の明治の作家と異なり、文体を含め「時代」を超えて理解されるものが多い。江戸からの視点に期待したのだが…。2019/08/23
でろり~ん
0
江戸から、という部分がかなり薄いなあ、という感想でした。歯切れよく正直な文体で、資料に対する当たり方に信頼のおける、好きな方の著者ではありますが、擁護側に回っていた里見弴関連の本は良かった印象ですが、どっちつかずの感覚で、なぜ漱石をターゲットにしたんでしょうかね。とっても分かりやすく先人の文例をひいてきて、それでもっての結論が二段階か三段階跳んでいるような、ま、いつも通りの語り口ではありましたが。なぜ、小説のなかの人物に世間的な正当性を求めるんでしょうか。時代、ということでもなさそうに思いますけれどねえ。2019/06/22