内容説明
内村鑑三の唱えた「無教会主義」の信仰に生き東大総長を務めた著者が、理性の信頼回復を懇願し、混迷する若者に教義を懇切丁寧に解き明かす。罪とは何か?赦しとは何か?復活、再臨、奇蹟をいかに解するべきか?科学の時代を踏まえながら西欧文明の根底を知る手引きとして、色褪せることのない稀有な名著を復刻。
目次
門をたたけ
キリスト教入門(人生と宗教;いかにしてキリスト教を学ぶか;キリスト教の歴史;キリスト教の神観;キリスト教の人間観;キリスト教の救済観;基督者の生涯)
キリスト教早わかり
無教会早わかり
聖書について
付 イエスの生涯
著者等紹介
矢内原忠雄[ヤナイハラタダオ]
1893(明治26)年、愛媛県生まれ。旧制一高時代に、内村鑑三の聖書研究会に入会、同校長の新渡戸稲造の影響を受ける。1917(大正6)年、東京帝国大学法学部卒業。1920(大正9)年、同経済学部助教授に就任。1937(昭和12)年、「中央公論」で日中戦争を批判する「国家の理想」を発表し、全文削除の処分を受けたことを契機に辞任。1938(昭和13)年、伝道用雑誌「嘉信」を発行。戦後に復職し、1951(昭和26)年、戦後二代目の総長(新生東京大学としては初代)となり、六年間務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
76
キリスト教入門書として、良著だと思います。内村鑑三の唱えた「無教会主義」に基づいたキリスト教論を基礎においているので、内村鑑三の著書も合わせて読むとより理解が深まるのではないでしょうか。2018/01/18
まると
20
欧米を理解する側面としてキリスト教の基本を学習したいと思っていたところ、内村鑑三の弟子で戦中に言論弾圧で東大を辞めた矢内原教授の入門書が復刻していると知り、手に取った。平易な文章で解説してくれているが、贖罪や再臨といった教義は無宗教の東洋人である自分にはやはり容易には理解しがたかった。「神を信じよ」という以外は教義を理解できないままに生涯を終える。それこそが神を主体とするキリスト教的な生き方なのだろう。矢内原先生が当時の趨勢に抗うことができたのも、キリスト教的平和主義が根底にあったからなのだと察せられる。2023/11/25
加納恭史
16
標準的なキリスト教入門かなと思って読む。内村鑑三の弟子と名のるから無教会主義のようだ。矢内原忠雄さんは独特の参考を述べる。聖書は新約も旧約も調べた。聖書第一主義である。教会も洗礼式も形だと言う。初期キリスト教徒に教会はなくエクレシアつまり集会があった。またアウグスティヌスのキリスト教信仰を重視している。キリスト教徒の知り合いはいるが熱心に聖書を読む人はなかなかいない。旧約聖書で神はエホバである。創造神のようだ。新約聖書でイエスはそのエホバを父なる神とした。また一般的な罪と贖罪は内面の聖霊によるとする。2025/01/10
あんさん
15
格調の高いキリスト教入門書。表題の『キリスト教入門』以外に『門をたたけ』など数編を収録。最初の出版は昭和27年とのこと。各所に日本の復興への希望と祈りを感じる。いきなりキリスト論からではなく「人生と宗教」「いかにしてキリスト教を学ぶか」から入って本論に繋げ、著書の理知的な信仰がよく分かる。当時の国民には新鮮ではなかったか。戦後キリスト教ブームへの影響も想像できた。「神を信ずる信仰を背景にもち、それに基づく道徳訓と、そうでない道徳訓とでは、その内容の高さにおいても、実行力においても、格段の差があるのである」2025/01/17
Haruka Fukuhara
14
格調の高いキリスト教入門で非常に刺激的でした。和歌から説き起こしたりいろいろとなるほどこう論を進めるのかと感心するところも。ブッダのことばと同時期に借りた本だったけれど、対照的な真理へのアプローチが興味深い。また聖おにいさんでも読み返そうかな。2017/08/06