内容説明
緒戦、奇襲攻撃で勝利するが、国力の差から劣勢となり敗戦に至る…。日米開戦直前の夏、総力戦研究所の若手エリートたちがシミュレーションを重ねて出した戦争の経過は、実際とほぼ同じだった!知られざる実話をもとに日本が“無謀な戦争”に突入したプロセスを描き、意思決定のあるべき姿を示す。
目次
第1章 三月の旅
第2章 イカロスたちの夏
第3章 暮色の空
巻末特別対談 日米開戦に見る日本人の「決める力」(VS勝間和代)
著者等紹介
猪瀬直樹[イノセナオキ]
1946年長野県生まれ。83年に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『日本凡人伝』を上梓し、87年『ミカドの肖像』で第十八回大宅壮一ノンフィクション賞。『日本国の研究』で96年度文藝春秋読者賞。2002年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。その戦いの軌跡は『道路の権力』『道路の決着』に詳しい。06年に東京工業大学特任教授、07年に東京都副知事に任命される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
159
当時は、実務経験のない若手のSIMレポートが実際の国の方針に影響を与えるはずもないのでは?と思いました。であれば、なぜ若手にSIMとレポートをさせたのか?若手だから(≒実務経験がないから)、“開戦および勝戦”をレポートしてくるだろうと上層部は踏んだんでしょうか?開戦派に不都合なレポートであった場合は、若手という理由で容易に却下できるから?つまり、“出来レース”だったということか・・・・・。2020/08/23
ケンイチミズバ
72
聞く耳を持たないのが残念でなりません。日本に石油はなくても大和魂という他国にない素晴らしい資源がある。だから弱腰ではだめだ。やってみなくては分からないものがあるのだ、で、どれほどの命が失われたことか。近代の戦争は軍隊だけの、軍事力だけの戦争でなく国の持てる力の全てを注ぐ総力戦となりました。関東軍の自作自演から始まった紛争は 事変どころか泥沼の総力戦と化し、血を流して得た領土は安々と還せるものかという考えは今のロシアと同じです。アメリカの怒りを買った大陸進出が石油の禁輸というしっぺ返しに。そして対米開戦へ。2025/09/01
molysk
71
昭和16年、夏。総力戦研究所に集められた若きエリートたちは、4年後に訪れる日本の敗戦を予測していた。日米開戦の机上演習で導かれたのは、石油を求めて南方進出しても、海上輸送網の壊滅で、本土に石油は届かないという冷厳な結論であった。この結果は、東條ら現実の政治家も半ば予測していたのかもしれない。だが、すでに醸成されていた、開戦止む無しという「空気」の中で、予測された敗戦はなかったものとされ、日本は無謀な戦争へと突き進んでいく。目的のために、事実が従属させられる。日本の意思決定プロセスは、戦前特有ではない。2020/06/06
momogaga
64
太平洋戦争が始まる前に日本の敗戦は予想されていた。この事実を扱った書籍を何冊か読みました。その中でもこの本は、それでもなぜ戦争を始めたのかを的確に説明してくれました。歴史の教科書では教えてくれない事実を読み友の皆さんにも、この本を読んで知っていただきたいです。2021/09/23
なかしー
57
総力研究所のお話。 戦争前にココまで整然とした戦力差(それを裏付ける様々な角度から分析された根拠含め)があり、反対意見などがあったのに… なぜ?としか良いようがない… 生命線である石油が米国輸入が切れる&南方油田確保≒泥棒が必要になると上長(大臣)などに報告して、馬鹿者と叱られるシーンはキツかった… このシーンで、あぁ…様々な人達が"分かって"いかながら、誰も決断できずに"誰かに決断して貰おうと"した閉塞した空気感が漂っていたのかと思ってしまう…(空気の研究のフラグ回収みたい)2025/09/25