出版社内容情報
生涯にたわむれし女三千七百四十二人、終には女護の島へと船出したまま行方知れずとなる稀代の遊蕩児世之介の物語が、最高の訳者を得て艶麗に甦る。
内容説明
七歳にして腰元の袖を引いて以来、たわむれし女三千七百四十二人。やさしく美しき女を求めて諸国をさすらい、終には女護の島へと船出したまま行方知れずとなる稀代の遊蕩児世之介。最高の訳者の匂い立つ現代語で、今その遍歴の物語が甦る。
著者等紹介
吉行淳之介[ヨシユキジュンノスケ]
大正13年(1924)、岡山市に生まれ、三歳のとき東京に移る。麻布中学から旧制静岡高校に入学。昭和18年9月、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため四日で帰郷。20年東大英文科に入学。大学時代より「新思潮」「世代」等の同人となり小説を書く。大学を中退してしばらく「モダン日本」の記者となる。29年に「驟雨」で第三十一回芥川賞を受賞。45年には『暗室』で第六回谷崎潤一郎賞を受賞する。平成6年7月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
146
落語にしばしば「若旦那」というのがでてくる。豪商の二代目、苦労知らずで放蕩のかぎりを尽くし、度がすぎて親の逆鱗にふれ勘当されたりもするが、意外と人情家な面もあって、惚れた太夫に優しく、金遣いも気持ちがいい。男にも女にもモテてどこか憎めない。その若旦那のモデルともいえるのが、この世之介なのである。落語の若旦那のキャラクタが、噺によって少しずつに変わるように、世之介もその主語さえあやふやで、ふわふわとつかみどころがない。全国色街太夫ガイドにして、色や欲のなかに美を見出す「おかしの文学」。2018/04/30
優希
54
濃密な性を描いた古典文学と言えるでしょう。幼い頃から女性と戯れる世之助。聖行為しか考えてないのではと思わずにはいられません。現代の遊び人に通じるものがあるでしょう。元禄時代の源氏物語とも捉えられますね。2023/01/21
k5
53
近世文学強化月刊①。『五人女』のゴシップテイストかなと思って読んだらわりと濃厚な世界で、もう少し精神的な体力がある時に読むべきだったかも。巻末に訳者の吉行淳之介のメモがあるんですが、これが面白く、森銑三の「一代男以外西鶴作品じゃない説」を批判的にみながらも、自分も「一代男の巻六は西鶴作品じゃない説」を創出してみるという。そうしてみると確かに巻六だけテイスト違ってみえるから昭和の文豪はさすがです。2022/07/02
優希
49
幼い頃から性に対して好奇心旺盛の世之助。頭の中は性行為のことしか考えてないような気がしました。現代の遊び人の古典版と言ってもいいかもしれません。2022/07/27
しんすけ
19
西鶴が書いたと言われる作品は数十点ほどあるが、本当に西鶴が書いたのは本書だけだとも謂われている。 国文学を専攻してなくて浮世草子は興味程度の知識しかないが頷くこともある。 なぜなら西鶴の外の作品と印象があまりも異なるからだ。 『好色五人女』『世間胸算用』『本朝二十不幸』などは、校注を頼りにすれば内容を把握することができる。 だが『好色一代男』はそんなことでは歯が立たない。俳諧師西鶴としての観察眼を基に書かれた文章は、俳諧の凝縮を理解せねば解かるものではない。 解説で吉行淳之介もそれらしきことを書いている。2022/09/02