感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
加納恭史
17
久しぶりに増毛の岩尾温泉アッタマールに行った。ななかまどの実が赤くなっている。この本で再び歴史に興味がわく。歴史にも自然や人間の性格描写があり、やはり詩や物語の文学なのだな。ダンテやペトラルカへの言及も多く文化に造詣が深い。シェイクスピアよりもイタリアは自然・詩学・物語の系譜があると語る。イタリア・ルネサンスの文化を十四世紀から十六世紀にかけて文化・芸術論を静かに展開する。絵画にも造詣が深い。当時カトリックの支配やスペインのイタリア支配を巡る暗い事態であったが、ブルクハルトは人間の明るい個性を追及する。2024/10/06
KAZOO
15
上巻に引き続いての読書です。前にも書きましたが、この時期を研究する人には必読書なのでしょう。イタリア人についての分析から社交についての考察、風俗、宗教についての分析があります。また原註、訳註がしっかりしていて参考になります。ただし年寄りの老眼にはかなりつらい感じです。2014/07/08
うえ
9
「想像力のためにイタリア人は、たとえば、近代の最初の大賭博者となる。想像力がかれらに未来の富や未来の享楽の情景をあまりにも生き生きと描いて見せるので、かれらは最後のものまでも、それに賭けるのである。…フィレンツェには14世紀の終わりにすでに、フィレンツェのカサノーヴァとも言うべき、ブオナッコルソ・ピッティという人物がいた。これは商人、党人、投機家、かつ職業賭博者としてたえず旅に出ていて、莫大な金額を得ては失い、相手にはブラバント、バイエルン、サヴォアの公爵たちなような王侯以外の者はとりあげなかった。」2021/03/14
belier
8
下巻まで読むと印象が少し変わった。オスマン帝国には嫌悪を感じていたようだが、イスラム世界の文化の高さは認めている。またそのことを知り、驚嘆したことがイタリア人の特徴という。さらに古代ギリシア、ローマから知を学んで復活させたからルネサンスなのだろうが、占星術など迷信的な文化も復活させたという指摘は興味深かった。ブルクハルトは、この時代のイタリアの文化を多面的に書き切ろうとしたように思える。彼の価値感とは正反対だろう、当時まだ続いていた中世的な習俗も詳しい。思いのほか多様なルネサンス紹介の書だった。2023/06/03
みのくま
8
イタリア・ルネサンスにおける政治的、道徳的退廃に対して、本書の行間から著者の隠しきれない嫌悪感が見て取れる。だが同時にその退廃こそが西欧における近代的個人の萌芽を掬い取る。このアンビバレンスな態度こそ本書の名著たる所以なのだろう。特に興味深いのは、ルネサンスは結局フランスとスペインのイタリア侵略を招く事になるのだが、事あるごとにブルクハルトはifを想像する。そこに彼の近代的思考、そして国民国家を前提にしたストレートな価値観が反映されている。その後の歴史家がブルクハルトをアップデートしたい気持ちがよくわかる2022/09/30