出版社内容情報
英軍捕虜として、ビルマの収容所で強制労働の日々を送った歴史家が、実体験から西欧の人種差別観を説く。名著を改版で読みやすく。
内容説明
英軍は、なぜ日本軍捕虜に家畜同様の食物を与えて平然としていられるのか。女性兵士は、なぜ捕虜の面前で全裸のまま平然としていられるのか。ビルマ英軍収容所に強制労働の日々を送った歴史家の鋭利な筆はたえず読者を驚かせ、微苦笑させつつ西欧という怪物の正体を暴露してゆく。激しい怒りとユーモアの見事な結合がここにある。強烈な事実のもつ説得力の前に、私たちの西欧観は再出発を余儀なくされるだろう。
目次
捕虜になるまで
強制労働の日々
泥棒の世界
捕虜の見た英軍
日本軍捕虜とビルマ人
戦場と収容所―人間価値の転換
帰還
著者等紹介
会田雄次[アイダユウジ]
1916(大正5)年に生まれる。40年、京都大学文学部史学科卒業。43年に応召、ビルマ戦線に送られ、戦後2年間、英軍の捕虜としてラングーンに抑留された。帰国後、神戸大学助教授、京都大学教授を経て同大学名誉教授。専攻、ルネサンス史。97年9月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
38
戦後、ルネスサンス史の研究等で論客として知られたという著者、太平洋戦争敗戦後のビルマ(現ミャンマ-)における1年9カ月にわたる捕虜生活を綴る記。悲惨で過酷な戦中、戦後の様子が淡々とした文章なるが故に真に迫る。学研の徒であった筆者のイギリス、インド、ビルマ、グルカ、日本の人々の文化人類的分析も印象深い。(コメントへ)2021/03/25
ばんだねいっぺい
29
序文が激しく、家畜人ヤプーを想像しながら読んだが、当のイギリス人だけではなく、ビルマ人、インド人と、それぞれの当時の実態や関係性が描かれ、多層な現実を伝えてくれる。環境に適応した勝者の姿は、どこかユーモラスに感じられた。階層構造がいじめの温床。2024/05/15
Nobuko Hashimoto
25
著者はビルマ戦線に送られ、終戦後、英国の捕虜収容所で2年を過ごす。シベリア抑留やアウシュヴィッツのような収容所に比べればあからさまな暴力などはなかったものの、アジア人を人と思わぬイギリス人の態度に尊厳を傷つけられた著者は、この体験を記録に残そうと筆を執る。冒頭こそ、そうした恨みつらみが強調されるが、中盤あたりからの人間観察、民族比較は生き生きとしていて、ユーモアすら感じさせる。ただ女性や肌の色や容姿に関する記述は、えええ!?という表現もあって、この世代のヒューマニズムの限界?なんて思ってしまった。2023/12/18
リョウ
9
戦後、ビルマでも現地の日本兵は捕虜として抑留され、重労働に駆り出されていた。捕虜の抑留というとシベリアでの過酷さが有名だが、英軍に支配されていたビルマでは生かさず殺さずの絶妙な塩梅で、米軍やソ連軍とはまた違った形で捕虜としての生活が待っていた。英軍の日本兵に対する扱いのひどさ、無関心さを文化の違いと見る視点は興味深かった。2024/10/10
恥ずかしい爺さんでっせ
9
中高生時代に1度近所の図書館で借りて速足で読んだかすかな記憶がありましたが、改めて買いなおし読みました。祖父はシベリア抑留に苦しみましたが、私のような爺だと会田先生のご苦労の節々読みにつけ、時々目頭が熱くなるものもありました。メインはイギリス人等の分析ですが、戦友の遺骨を届けに行っても遺族が忘れようと新しい生活をしているさまを見てしまった、等のちょっとした一節にも牟田口等の愚将に翻弄された兵隊の皆様の御辛苦を察して悲しくも感じました。先生もイギリス等への皮肉で悲しみを紛らわせてたかなとも察しました。2022/12/03